配偶者居住権の問題点。親が認知症になったらどうする?

 

こんにちは。横浜のもめない相続の専門家、司法書士/上級心理カウンセラーの甲斐です。

民法の相続法の改正が成立し、新たな権利として「配偶者居住権」が創設されました。

 

配偶者居住権は、遺産分割協議等で取得できる、被相続人の配偶者が自宅をそのまま使用できる権利です。

今までの法律では、各相続人に公平に分配する遺産が無い状況で、相続人の話し合いがまとまらない場合、最悪、自宅を売却し、そのお金を分配する等、残された配偶者が住み慣れた我が家を手放す必要もありました。

しかし、民法(相続法)が改正され、自宅にそのまま住み続ける事ができる「配偶者居住権」が新設された事により、この問題はクリアーになりました。

ところが、良く条文を読んでみますと、新しい問題(と言うよりも疑問)が一つ出てきました。

それはズバリ、

「残された配偶者が認知症になった時に、施設の入所費用に充てる為に自宅を売却したい時はどうするの?」

と言う点です。

今回はこのお話しをしたいと思います。

なお、改正された民法(相続法)はまだ施行されておらず、実務上どうなるかはまだ現在の段階では分かりません。

その為、今回のお話しは現時点で公開されている情報での問題点の指摘と解決方法である事をご了承下さい。

 

1.配偶者居住権付きの不動産を売却できるのか?

結論としては、「理論上売却は可能ですが、実務上買い手はつかない」と言うことになります。

実家に一人暮らししていた親が認知症になり、どうしても施設に入所する必要が出てきた。

しかし、施設への入所金としてまとまったお金がない為、実家を売却してその費用に充てたい。

これは実務上良くある話です。

施設に入所する必要性が生じたけれど、親にも子供にも施設の入所の為のお金の余裕が無い場合、実家を売却する必要が出てきます。

ですが、建物には配偶者居住権が設定されています。

果たして配偶者居住権付きの不動産を売却する事が可能なのか?と言う問題が出てきます。

法律上の話で言えば、特に禁止されていませんので売却は可能です。

しかし、配偶者居住権と言う権利が付いた、事実上何も出来ない不動産を誰が欲しがるでしょうか?

その為、実家を売却する為には、配偶者居住権を消滅させて、その登記を抹消する必要がありますが、そこにも問題があるのです。

 

2.配偶者居住権の消滅事由

そもそも、配偶者居住権が消滅するのはどのような場合なのでしょうか?

簡単にまとめてみました。

⑴ 事前に定められた配偶者居住権の存続期間が終了した時(改正民法第1030条)。
(期間を定めなかった場合、配偶者が亡くなるまで存続します。)

⑵ いわゆる善管注意義務を怠った時(改正民法第1032条1項)。
(配偶者はあくまで居住権を取得しただけで、建物の所有者は別にいます。他人の建物に住んでいますので大事に使う義務があります。つまり、その義務に違反した時です。)

⑶ 配偶者が建物所有者に断る事なく、勝手に建物を増改築したり、他人に使用させた時(改正民法第1032条3項)。
(いわゆるリフォームはこれに該当しません。)

⑷ 配偶者が配偶者居住権を放棄した時。

⑴については通常、期限を定める事はないでしょう。⑵、⑶もあまり問題にならないと思いますので、配偶者居住権を消滅させる為には、実質⑷のみになると思います。

しかし、配偶者本人は認知症のはずで、施設への入所が必要になったと言う事は意思能力をかなり喪失しているはずです。

そのような状態の配偶者が、配偶者居住権を消滅させる意思表示が出来るのか?非常に疑問になってきます。

 

3.考えられる対応策

今のところ考えられる有効な対応策は、

配偶者の意思能力が完全に喪失する前に、配偶者居住権を消滅させる意思表示をしてもらう」です。

認知症はある日突然意思能力を喪失するわけではありません。

物忘れが少しづつ酷くなったり、判断能力が少しづつ低下するのが通常です。

認知症の初期の段階では、意思能力も判断能力も大丈夫なケースもあります。

その初期の段階で、実家を売却する必要性をしっかりと説明し、配偶者居住権を消滅させる意思表示をしてもらうのです。

説得するのではなく、あくまで理解・納得してもらう。

大変ですが、これが現状考えられる対応策になります。

その為、配偶者居住権を設定した場合は、ご自身の親とは定期的に連絡を取るようにして、認知症の発症に気を配る必要があります。

 

4.建物を事実上、取り壊してはどうか?

自宅を売却する場合、建物は取り壊して土地のみを売却する事がほとんどです。

配偶者居住権は建物に設定・登記をするものですので、建物が取り壊された場合、配偶者居住権も消滅すると考えられます。

配偶者居住権が消滅すれば、不動産の買い手もつくはずですので、所有者が事実上建物を取り壊してはどうか?と言うアイディアが思いつくかもしれません。

しかし、配偶者居住権が設定された建物を勝手に取り壊す事は、違法行為になります。

実は今回、民法(相続法)だけではなく、刑法も改正されているのです。

(自己の物の損壊等)
刑法第262条 自己の物であっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は配偶者居住権が設定されたものを損壊し、又は傷害したときは、前三条の例による。

 

これは他人の所有物を壊した場合の罪を定めた条文なのですが、自分の所有物であっても配偶者居住権が設定されている場合、刑法上の罪に該当する事が明文化されました。

つまり、事実上であろうと、配偶者居住権が設定された建物を勝手に取り壊すのはNGとなります。

 

5.まとめ

改正された民法はまだ施行されていませんので、今後これらの問題について、新たな解決策が考えられる可能性があります。

その為の情報収集は常に行い、このブログを通じて皆様に分かりやすく情報提供していきたいと考えております。

 

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

合格率2~3%台の司法書士試験を、4年間の独学を経て合格。

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」「認知療法」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

丁寧な言葉で厳しい発言をする(でも愛はある)。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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