成年被後見人の親の支出はどこまで認められるのか?

こんにちは。横浜のもめない相続の専門家、司法書士/上級心理カウンセラーの甲斐です。

今回は、後見制度の利用を検討している方が疑問に思う事についてお話したいと思います。

65歳以上の高齢者の方で認知症になっている方の割合は7人に1人とか言われているとおり、親が程度の差はあれ、認知症になる事は珍しくない状況になっています。

家族信託(民事信託)等、事前に財産に関する認知症対策を行っていない場合、親が認知症になって意思能力が無くなってしまえば、後見の申し立てを検討しなくてはいけない状況になる事もあると思います。

その中で色々と疑問が出てくると思うのですが、大きな関心ごとは

「親のお金はどこまで使えるの?」

ではないでしょうか?

「今までは親のお金は家族の為に使っていたけれど、成年後見人が選ばれたらどこまでが許されるのか?」

「インターネットの情報だと、一切家族のために使用できないと書いてあるけれど本当なのか?」

親が認知症になってしまった当事者の方にとってみれば、切実な問題だと思います。

そこで今回は、成年後見人が選任された場合、成年被後見人(認知症の方)の支出はどこまで許されるのか?家庭裁判所の運用を交えてお話したいと思います。

 

1.成年後見人の財産管理の原則

後見人が行う財産管理の中でも中心になるのが、被後見人の収入と支出の管理です。

特に支出に関しては原則として、

・現状維持で
・被後見人の生活にとって必要なものの範囲に限られます。

現状維持と言うのは、不動産であれば基本的に売却等を行わず、そのままの状態にしておく事を言います(条件がそろえば売却は可能なのですが、原則は現状維持と言う意味です)。

また、現金・預金もそのままで、投資等の運用を行ってはいけません。

例え被後見人が意思能力がある段階で「自宅を売却しても良い」「投資をしたい」と言っていたとしてもNGになります。

 

2.具体的な支出の内容

① 配偶者や未成年の子供に対する生活費

これは民法上認められていますので、支出する事が出来ます。

配偶者や未成年の子供に対する扶養は民法752条(同居・協力扶助)及び民法820条(監護・教育)の義務の内容となっています。

ただし、配偶者について十分な収入がある場合、被後見人の扶養義務として被後見人の財産から生活費を支出する必要性は低くなると考えられています。

② 配偶者・未成年の子供以外に対する生活費

これは原則行う事はできません。

例外として、配偶者・未成年の子供以外の親族については、被後見人がその地位相応の生活をしてなお余裕がある場合に限り、必要最小限の支出が認められています。

その為、成人した子供の生活費や教育費等は当然に支出する事は出来ませんが、何らかのどうしようもない事情(子供が働きたくても働く事が出来ない事情等)がある場合は、一定額の生活費・教育費の支出が認められる場合がありますが、そのハードルは高いと思っていた方が良いでしょう。

③ 公共料金等

電気・水道・ガス、電話代、住宅の家賃等の支出は認められます。

なお、支出が分かりやすくする為に、出来るだけ口座からの引落しを利用する事が望まれます。

④ 孫への誕生日プレゼント、クリスマスプレゼント

通常は可愛い孫の為に、誕生日やクリスマスプレゼントを行うのが世間一般常識だと思うのですが、原則として認められないでしょう。

ただし、その金額が少額な場合、支出として認められる余地はあります。

⑤ 保険関連

これはケースバイケースですが、認められる事があります。

例えば被後見人が施設に入居して自宅が空家になった為、その空家に火災保険に加入する事が認められる場合があります。

生命保険は受取人が誰になるかによって判断が分かれます。

例えば被後見人の死亡後に家族を扶養する必要がある合理的な理由がある場合は、保険料が支出として認められる事があるでしょう。

⑥ 旅費

「親が元気な頃、年1回旅行に行っていたので、認知症になった今でも旅行に連れて行ってあげたい。その旅行代金を親のお金から支払う事は可能ですか?」

と言った質問を良く受けるのですが、これは原則出来ないと思って下さい。

旅行は大きなお金が動きますし、家庭裁判所から見れば「本人にとって本当に必要な支出なの?」と思われてしまうからです。

 

3.まとめ

ここに挙げたのはあくまで一例であり、実際に被後見人の財産から支出を行う場合、必ず家庭裁判所と相談するようにして下さい。

このように、後見制度を利用すると、被後見人の財産は現状維持が基本になり、それ以外の支出は本当に本人にとって必要なものではない限り、認められない傾向があります。

これは昨今、親族後見人、専門職後見人双方の被後見人の財産の横領事件が多発しており、家庭裁判所の運用が厳しくなっているのがその理由の一つです。

認知症になって意思能力が喪失してしまえば、後見制度を利用せざるを得ない状況になるのですが、まだ元気なうちであれば、家族信託や生前贈与等、いくらでも対策を行う事は可能です。

上述したとおり、認知症の問題はもう避けては通れません。

親が元気な内に、認知症になった場合にどうするか?家族間で話し合いを絶対に行うべきでしょう。

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

 

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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