絶対に必要!子供のいない夫婦の遺言書の書き方とは?

遺言

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こんにちは。司法書士の甲斐です。

遺言を作成した方が良いケースで、「子供がいない夫婦」というパターンがあります。

夫婦それぞれの両親も亡くなっており、相続人がそれぞれの兄弟姉妹になるケースです。

「夫(妻)の兄弟姉妹と遺産分割協議なんて出来ない。何をどう話し合えば良いか分からない。」

このように考える方が多く、また兄弟姉妹の相続人には遺留分(最低相続分)がありません。

その為、子供がいない夫婦で積極的に遺言を作成する方は多く、その文例も豊富にあるのですが、それでも「本当にこの内容で大丈夫なの?」と司法書士等に相談される方もいらっしゃいます。

そこで今回は、「子供がいない夫婦」に焦点をあて、どのような遺言を作成すると良いのかをお話ししたいと思います。

1.遺言がなければ夫(妻)に全財産を相続させる事ができない

まずは法定相続人のおさらいをしましょう。

子供のいない夫婦の一方が亡くなった場合、

・夫(妻)の父母(つまり義母)がまだ存命の場合、あなたと義父母がともに相続人になります。

その法定相続分は、配偶者が2/3、義父母が1/3(二人とも存命の場合は、合わせて1/3です。)

・義母が亡くなっており、さらに上の世代の方も既に亡くなっている場合は、あなたと夫(妻)の兄弟姉妹が相続人になります。

(兄弟姉妹が先に亡くなっているときはその子供が相続人になります。)

その法定相続分は,配偶者が3/4、兄弟姉妹等が1/4となります。

このように、夫婦の一方が亡くなった時は、残された夫婦の一方とともに、義父母や兄弟等が相続人になります。

つまり、相続手続きは遺言が無い限り、これらの方々全員の協力が必要になってくるのです。

具体的に遺産を誰が相続するのかを話し合い、遺産分割協議書に実印を押してもらい、印鑑証明書を提出してもらう必要があります。

普段から義父母や兄弟姉妹とお互いが分かりあえるレベルのコミュニケーションをとっていれば問題ありませんが、そのような方は少数派でしょう。

つまり、あなたが

夫(妻)の財産を全て相続したい。夫婦なんだから、それが当たり前でしょ?

と思っても、義父母や兄弟姉妹から「そんなの有り得ない。法律通り公平にしてよ!」と言われてしまえば、その通りに従うしかないのです。

しかし、遺言を残しておけば相続手続きは義父や兄弟姉妹の関与なく行う事が出来ます。

さらに、兄弟姉妹には最低相続分である遺留分はありませんので、子供のいない夫婦は遺言を作成する事が必須と言えるのです。

2.全財産を夫(妻)に相続させる遺言例

ご自身の遺産を配偶者に全て相続させたい場合の遺言書例を考えてみましょう。

事例の場合における一番簡単な遺言例は、ずばり下記のとおりです。

遺言書

遺言者は、遺言者が有する全ての財産を、遺言者の妻(夫)〇〇(昭和○年〇月〇日生)に相続させる。

令和〇年○月〇日
横浜市〇〇区〇〇一丁目2番3号
遺言者 〇〇 〇〇 

はい、遺言書の記載例が紹介されている書籍等でごく普通に紹介されている遺言例です。
なお、最近このシンプルな文例が「問題がある遺言」として某マスコミに紹介されましたが、そんな事はありません。
事例のように子供がいない夫婦の場合、このようなシンプルな文例でも大丈夫です。
むしろ間違った遺言(無効な遺言)を作成されるよりも100倍マシです。

なので、この文章例を基本とするようにしましょう。

3.より良い遺言例

とは言え、スムーズな相続手続きを目的とした場合、追加した方が良い項目があります。

例えば、遺産の種類ですね。

「下記の遺産を含む、遺言者の全ての遺産を~」と言う文言に変更し、不動産や預貯金の口座番号を記載する方法です。

こうすると残された配偶者が遺産の調査を行う時に、非常に楽になります。

また、もし配偶者が先に亡くなった場合の財産の承継先を決めておくのも良いでしょう。

さらに、状況に応じて遺言執行者を指定しておくのも一つの案です。

遺言書

第1条 遺言者は、下記の遺産を含む、遺言者の全ての遺産を、遺言者の妻(夫)〇〇(昭和○年〇月〇日生)に相続させる。

不動産の表示 (省略)
預貯金の表示 (省略)

第2条 前記〇〇が遺言者の死亡以前に死亡した場合は、前条で前記〇〇に相続させるとした財産を、遺言者の友人〇〇(昭和○○年〇月〇日生)に遺贈する。

第3条 遺言者は、遺言執行者として次の者を指定する。
住所 東京都町田市〇〇四丁目5番6号
氏名 司法書士 〇〇 〇〇

令和〇年○月〇日
横浜市〇〇区〇〇一丁目2番3号
遺言者 〇〇 〇〇 

4.相続人(兄弟姉妹)から争われないか?

相続人が兄弟姉妹の場合は遺留分がありませんので、遺言で配偶者に全て相続させれば基本的に問題になる事はないでしょう。

しかし、場合によっては

「遺言者は遺言を作成した当時、認知症で遺言能力が無かった!」

このような理由(その他、想定外の理由)で、遺言の無効を争ってくるかもしれません。

このようなケースが考えられる場合、医師の診断書や遺言の作成状況をビデオで録画する等、問題なく遺言が成立した事の証拠を残す事が考えられます。

5.遺言の保管方法

さて、次の課題は遺言の保管方法です。

公正証書遺言であれば公証役場に原本が保管されるので問題はないのですが、自筆証書遺言であれば、ご自身でしっかりと管理する必要があります。

自室の机の中とか、耐火金庫の中とか、管理しやすい場所で保管するようにしましょう。

なお、銀行や信託銀行の貸金庫での保管は避けましょう。

相続が発生した場合、銀行や信託銀行は貸金庫を開ける為に、相続人全員の立会いを求める事があるからです。

これでは、他の相続人の関与を必要としない遺言を作成した意味が無くなります。

その為、自筆証書遺言の保管場所として、銀行、信用金庫の貸金庫は避けましょう。

なお、今後は法務局で自筆証書遺言を保管する事が出来るようになります。

こちらも併せて検討しても良いでしょう。

法務局での自筆証書遺言の保管については、下記のページをご覧下さい。

法務局で自筆証書遺言を保管する事ができるようになります。
今回は、先日成立しました法律で、自筆証書遺言を法務局で保管をする事が出来る制度についてお話ししたいと思います。遺言は大きく分けて、・自筆証書遺言・公正証書遺言の2つがありますが、専門家が遺言の相談を受けた場合、基本的には公正証...

6.子供がいない夫婦の遺言は公正証書にすべきか?

遺言は遺言者自らが作成する自筆証書遺言と、公証人が作成する公正証書遺言があります。

子供がいない夫婦の場合、どちらの遺言を作成すべきかと言う問題がありますが、これは非常に悩ましいところです。

義父母や兄弟姉妹が相続について何か主張してこないと分かっているのであれば、自筆証書遺言でも良いかもしれません。

しかし、性格等から何らかの問題が予想される場合、安全策を取って公正証書遺言を作成した方が良いでしょう。

7.遺言だけでは無く、経済的な問題解決も必要

遺言はあくまで法的な問題を解決する手段です。

その為、例えば夫が若い内に亡くなった場合、残された妻が経済的に困窮する可能性もあります。

残された配偶者の経済的問題をどのように解決するのか?

例えば生命保険を活用したり、配偶者が生活に困らないようなスキルを身に付ける手伝いをする等、幅広い考え方が必要になってくるでしょう。

8.まとめ -遺言は夫婦お互いに作成を-

子供がいない夫婦の遺言は簡単そうに見えて、それでも見落としてはいけないポイントはあります。

遺言を作成しても揉めない、トラブルにならない可能性はゼロにはなりませんが、それでも限りなくゼロに近づける事はできます。

残される配偶者の為にも、用意周到な遺言をお互いに作成するようにしましょう。

なお、当事務所ではもめない相続を目指す為に、遺言の作成サポートを行っております。

お気軽にお問い合わせ下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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