事例(7)【高齢の兄弟姉妹でアパートを共有している場合の家族信託の活用】

民事信託・家族信託の事例

1.具体的事例紹介

太郎さん、二郎さん、花子さん、雪子さんご兄弟はとあるアパートを共有で所有しています(持分は全て同じです)。

四人は高齢でさらに遠方の地にバラバラに住んでいる為、アパートの事実上の管理は太郎さんの長男である一郎さんがおこなっております。

しかしながら新しい入居者との契約や、リフォームの際の業者との契約は一郎さんが行う事が出来ないので、四人が対応しています。

しかし、高齢者にとってはそれが非常に負担になっており、一郎さんへアパートを贈与する事も検討したのですが、贈与税が非常に高額になり現実的な解決策ではなく、四人は非常に困っています。

2.このまま何も行わなければ・・・?

不動産の共有状態と言うのは良くあるのですが、実は様々なデメリットがあります。

事例であれば、新しい入居者との賃貸借契約を行ったり、アパートの売却を行う場合は、原則、太郎さんご兄弟全員が貸主、所有者として契約する必要があります。

(賃貸借契約の場合は例外がありますが、話が複雑になりますので割愛します。)

また、もし今の共有状態で四人のうちのどなたかが亡くなり、相続が発生すると、その相続人との共有状態になります。

相続人がアパート経営にあまり積極的で無ければ、アパートの管理にさらに支障をきたす事になり、最悪の場合は売却を行いたくなったとしても、事実上売却が不可能になる事だってあるでしょう。
 
さらに、もし四人のうちどなたかが認知症等になってしまったら、アパート管理の為に後見の申立を行う必要があります。

家庭裁判所から選任された成年後見人とアパートの管理方法について対立する可能性もありますし、成年後見人の報酬もずっと支払っていく必要があります。

このように、不動産を共有状態にしておく事はデメリットだらけであり、将来的に余計な出費が発生する可能性も高いのです。

3.家族信託を活用した場合 -共有状態解消信託-

委託者兼受益者を太郎さん兄弟全員、受託者を一郎さんとする信託契約を締結します。

信託財産を四人が共有で所有しているアパート及びアパートの管理に必要な現金とし、信託の内容をアパートの管理や新規入居者との契約等にしておくと、法律上太郎さんが適切にアパートの管理を行う事が可能になります。

毎月得られる賃料は一郎さんが管理して、太郎さんご兄弟に分配する事で、太郎さんご兄弟はアパート管理の煩わしさから開放され、かつ収益はきちんと受け取る事が出来ます。

さらに、太郎さんご兄弟のどなたかが認知症になったとしても、アパート管理には影響がなく、一郎さんがそのまま管理をする事が出来ますし、信託の終了時期や、その際にアパートを誰が取得するのか、と言った事も事前に決めておけば、相続が発生してももめる事はありません。

4.まとめ ー不動産の共有状態はデメリットだらけ-

不動産を共有状態で所有されている方を良くお見かけします。

おそらく相続の時にもめないように平等に相続する為に共有にされたのだと思いますが、不動産を共有にする事はデメリットが多く、その管理や売却を行う際に支障をきたす事が多いです。

また、共有の状態で相続が発生するとさらにその管理や処分が大変な事になる可能性があります。

アパート等の不動産を共有で所有されている場合は、次の世代の方のためにも、家族信託を活用した方が良いでしょう。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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