家族信託が必要のない(やってはいけない)ケースを考えてみました

民事信託・家族信託の基本

こんにちは。司法書士の甲斐です。

様々なTVで家族信託が取り上げられるようになり、当事務所にも家族信託のお問合せが増え、個人的な感想として、ちょっとした『家族信託ブーム』が来ているような感覚がします。

ただし、お問合せの中には、

その状況って、本当に家族信託が必要?

と思う事も少なくなりません。

TV等のメディアの情報は番組としての時間が決められている関係上、どうしても断片的な情報にならざるを得ない事があり、家族信託の本質がキチンと伝わらない事もあります。

その為、家族信託が今の所必要がないと思われるケースもお問合せとしてあります。

そこで今回は、この『家族信託が取り敢えず必要ではないケース』を解説していきたいと思います。

これが分かれば、逆説的に家族信託を利用すべきケースが大雑把にでも見えてきます。

なお、『必要がない』と思われても細かいご家庭の事情から、やはり必要と考えられる事もあります。

その為、各項目に『反対の立場からの意見』を入れている場合があり、見方によっては結論が非常にキレが悪い内容になっている事もあります。

これは色々な情報、考え方を取り入れ、最終的にどうするかを皆様でご判断して頂きたい為に、あえてそのように致しました事をご了承下さい。

1.財産に自宅等の不動産がない

家族信託が良く利用されるケースとして、

「将来、認知症等になった場合に、自宅を売却して施設の入所費用等に充てたい」

と言うケースがあります。

認知症になり、意思能力・判断能力が低下した場合、自宅を売却する契約を締結する事が難しくなりますので、その時に備えて成年後見制度ではなく家族信託を利用するケースです。

逆を言ってしまえば、管理や処分をする不動産を所有していなければ、家族信託を選択する理由が一つ減ります。

(不動産を所有していても、処分を行う予定がない場合もこれに含まれます。)

その他、不動産を含めた財産がほとんどないケースもこれに該当するでしょう。

【ここから下は反対の立場からのお話しです。】

ご本人が財産の処分を予定していなくても、ほとんど財産がない場合であっても、ご本人が財産管理が難しい場合は家族信託の利用を検討しても良いと思います。

財産がほとんどなくても『家族信託を絶対に行ってはいけない』と言うわけではありません(実益は少ないかもしれませんが)。

2.精神的・肉体的にもまだまだ元気である

家族信託は多くは委託者と受託者の契約で行う『信託契約』が利用されており、元気なうちに行うのが原則です(意思能力が低下すれば契約を締結する事が難しくなります)。

とは言え、持病も無い、認知症の前兆も無くまだまだ現役バリバリの状態であれば、家族信託の必要性が乏しいかもしれません。

【ここから下は反対の主張です。】

確かに、まだまだ体力も気力も十分な時は、認知症対策の家族信託は必要ないかもしれません。

しかし、アパート等の投資用物件を複数所有しており、その管理等を次世代の家族に任せて、ご自身はまた別の事にチャレンジされたい場合は、家族信託は有効な手段になります。

家族信託=認知症対策のみ、と言うわけではありません。

3.家族の仲が良くない、問題がある

家族信託は家族の内一人(若しくは複数人)が、委託者の財産を管理・処分する制度です。

例えば子供どうしの仲が悪く、親の財産を子供の一人が管理していた場合、他の子供の立場としてみれば、あまり良い気はしないはずです。

場合によっては、

「親の財産を使い込んでいるに違いない」

と正しく財産管理を行っていたとしてもあらぬ疑いをかけられ、受託者になった人は精神的に追い詰められるかもしれません。

また、親の財産を独り占めしたいと思った子供がいた場合、信託契約の内容として、信託終了時の残余財産を全て独り占めする内容にするかもしれません。

そうなれば、確実に『争続』に発展します。

そうであれば弁護士・司法書士等の客観的な第三者が財産を管理する、成年後見制度を利用した方が良いでしょう。

このケースは『家族信託が必要ない』と言うより、『家族信託を利用してはいけない』ケースかもしれません。

【ここから下は反対の主張です。】

元々子供達の仲が良くなく、相続で親の財産を少しでも欲しいと思った場合、親を説得して遺言書の書き換え合戦が行われる可能性もあります。

そのような時、家族信託を利用し、委託者(親)の財産の大部分を信託財産とする事で、信託財産は相続財産とは別の財産となります。

つまり、遺言の書き換え合戦を防ぐ事ができますので(相続財産ではなくなる=遺言を書く意味がなくなります)、その意味では家族信託を利用しても良いでしょう。

後は信託終了時の信託財産の帰属先を不公平がないように事前に決めておけばOKです。

4.まとめ

家族信託の目的は、信頼のおける第三者に自分の財産を託して、財産の管理・処分等を行ってもらう事です。

その為、家族信託を利用を考えるべきケースは、まずは財産を管理・処分してもらう必要性があるかないかが挙げられます。

また、家族信託は家族の協力が必要不可欠です。

協力が得られない、むしろ敵対関係になってしまう場合は慎重に考えた方が良いかもしれません。

家族信託は場合によっては長期間継続する制度です。

本当に親等の家族の財産を管理・処分する必要があるのか?それは家族信託しか方法がないのか?等をしっかり検討して導入するようにしましょう。

なお、下記の特別サイトでも家族信託の詳しい情報を掲載しています。

併せてご覧下さい。

https://www.kazoku-shintaku.yokohama/
文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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