絶対に知っておくべき家族信託のデメリット(注意点)を徹底解説します

民事信託・家族信託の基本

こんにちは。司法書士の甲斐です。

家族信託は成年後見制度や遺言等では実現不可能な、自由度が高い財産の管理・処分を行う事が出来る制度です。

その為、様々なメディアやWebサイトで、

「家族信託は親が認知症になっても大丈夫。究極の財産管理ツールです!」
「家族の思いを伝える事が出来る夢のような制度。遺言では出来ない事が家族信託ではできるんです!」

等、家族信託の良い部分のみがクローズアップされる事が多いので、逆に「家族信託は信用出来ない」と、このような感想をお持ちの方はいらっしゃいます。

確かに、家族信託には優れたメリットが沢山あります。

それは間違いなく事実です。しかしながら、物事には表裏があるように、家族信託にもデメリット、つまり注意すべき点が存在します。

今回は、専門家でもあまり話したがらない、家族信託のデメリット、注意点をお話ししていきたいと思います。

1.信託財産の名義は、受託者名義になる

信託法上、信託された財産は受託者名義になります。

その為、不動産を信託財産とした場合は「信託」を原因として所有権移転登記を行いますし、金銭であれば、信託口口座を新たに開設して財産を分別管理(自分の財産と信託財産を分けて管理)を行う必要があります。

実はこの「財産の名義が受託者に移る」と言う事に、非常に抵抗感を持っている委託者予定の方がいらっしゃるのです。

本来は苦労して手に入れた自分の財産のはずなのに、その名義を変えられるのは納得いかない!さらに自分の好きな様に財産を使う事ができない!と不満を感じる委託者の方がいらっしゃいます。

確かに、財産の名義は委託者から受託者へ移りますが、それは委託者、受託者で決めた信託の内容を実現させる為に移るだけです。

委託者、受託者で決めた内容以上の事を行う事は出来ません。

また、信託財産から得られる利益(自宅に住み続ける権利等)はあくまで受益者のものとなります。

その為、信託財産の名義が受託者へ移ったとしても、完全に自分の物では無くなったわけではない事をご理解下さい。

2.信託口口座の開設を拒否される事がある

金銭を信託財産とした場合、分別管理する為に通常は新たな口座(信託口口座)を開設して、その口座で金銭を管理する方法が考えられます。

最近は家族信託と言う言葉とその内容が少しずつ世の中に浸透してきた事もあり、信託口口座を開設する事が出来る金融機関が増えてきたのですが、それでも家族信託の事を理解されていない金融機関では、開設を断られる事があるそうです。

しかしながら、支店レベルで断られても、本部に確認してもらったら開設OKだったと言う事例もありますので、金融機関に対しては諦めず粘り強く交渉する必要があります。

その為には、しっかりと信託契約の内容を作りこみ、それを信託契約書として客観的に目に見える状態にする事が必要不可欠になります。

3.受託者には様々な義務がある

受託者には信託法上、様々な義務が課せられています。

上記の信託財産の分別管理もそうですし、他人の物を預かって管理・処分を行うわけですから、自分の物を扱う以上の注意義務があります(これを、『善管注意義務』と言います。

ただし、善管注意義務は信託の内容で注意義務のレベルを軽減する事も出来ます)。

これは委託者兼受益者:父(母)、受託者:子供の親子間の家族信託でも全く同じです。

親子間でも信託法上、受託者には様々な注意義務があります。

これ以外にも沢山の義務や注意をする事がありますので、その事が受託者の負担となってしまう事があるのです。

4.誰も受託者をやりたがらない事がある  

上記のとおり、受託者は法律上様々な義務があり、中途半端は気持ちではその業務を行う事は難しい事は容易に想像できると思います。

その為、受託者候補の方から、「そんな重い責任を負いたくない」と、受託者を断られる事が少なくありません。

5.家族信託でも出来ない事がある

典型的なものが、成年後見制度でしか行う事が出来ない「身上監護」です。

家族信託はあくまで委託者の財産を管理・処分を行う制度であり、身上監護を行う権限はありません。

その為、委託者に身上監護が必要になった場合、別途成年後見制度を利用する必要があります。

6.場合によっては信託は何十年も続く事がある

家族信託は委託者と受託者との約束事であり、場合によっては何十年も続く事があり、その間、信託によって当事者を拘束する事になります。

委託者としては受託者を信頼していたのだけど、次第に信頼関係が無くなってきて家族信託をやめたくなる事だってあるかもしれません。

受託者にしても、最初はモチベーションがあったけれど、しだいに信託財産の管理が面倒になり、どんどんやる気が無くなった、と言う事もあるでしょう。

このような事がある為、『信託の開始時の当事者に何かの事情が発生した場合にどうするのか?』を最初の段階でしっかりと決めておく必要があります。

7.相続税対策等、節税にはならない

家族信託を利用する上で、良く税制上のメリットを聞かれる事があるのですが、家族信託を利用する事自体に節税の効果はありません。

(相続税対策を行っている高齢者の方が家族信託を利用し、ご家族の方に引き続き相続税対策を行ってもらう事例はありますが、これは継続的に相続税対策を行う手段として、家族信託を利用しているだけです。)

8.家族信託の専門家が少ない

家族信託は新しい制度です、その為、見解が分かれる論点について、確立した判例も少ない事に注意が必要です。

また、しっかりと勉強をしている専門家も少ない為、家族信託をご利用されたい方にとってみれば相談先が限られてくるのが現状です。

9.家族信託の専門家のコンサルティング料がかかる場合がある

上記のとおり、家族信託は最先端な仕組みですが、まだまだその専門家は多くありません。

つまり家族信託は誰でも相談にのる事が出来るわけではありません。

その為、家族信託の相談料やコンサルティング料金は、遺言や相続手続きと比べて高めに設定されている事があります。

ただし、費用対効果として考えれば、成年後見制度等を利用した場合に比べて、家族信託の相談料やコンサルティング料金はけっして高いわけではありません。

10.まとめ

いかがでしたか?

家族信託には上述したとおり、様々なデメリット、注意点があります。

ただそれは、他人の財産の管理・処分を行うわけですので、当然と言えば当然なのかも知れません。

家族信託は今までの法律の仕組みでは出来なかった事が出来る様になります。

使い方によっては素晴らしい効果をもたらせてくれます。

当事務所は家族信託のメリット・デメリットを分かりやすくご説明し、サポートを行っておりますので、遠慮なくご相談下さい。

家族信託については下記の専門サイトでも分かりやすく解説していますので、よろしければご覧下さい。

https://www.kazoku-shintaku.yokohama
文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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