相続等で勝手に所有権移転登記をされた場合の対処方法

当HPにお越し頂いている方は、実に様々な検索ワードで検索されていらっしゃいます。「横浜市 相続」「横浜市泉区 相続」「横浜市 クーリングオフ」等々、様々なキーワードが検索ワードとなっております。

その中でも「勝手に所有権移転登記をされた」というキーワードで検索され、当HPを訪問されている方が多い事に気が付きました。不動産の名義を勝手に変えられたと言う意味だと思うのですが、1日にお一人は必ずこのキーワードで検索、訪問されております。

世の中にはそんなに勝手に不動産の名義変更をされるケースが多いのかと不思議に思いつつ、でもニーズがあるのであれば、今回はそれをテーマにして、より詳しく解説したいと思います。

 

1.そもそも、「勝手に所有権移転登記をされる」ケースとは?

勝手に所有権移転登記をされる事を、「自分の知らない間に登記された」事と定義しますと、このケースは一定の類型が考えられます。

① 債権者による登記(代位登記)

例えば、あなたがAさんに、Aさん所有の不動産を担保として、お金を貸したとします。Aさん所有の不動産に抵当権の設定登記をしたいと思ったのですが、登記事項証明書を確認してみると、所有者はAさんではなく、Bさんでした。AさんはBさんからこの不動産を購入したのですが、まだ所有権移転登記をしていなかったのです。

あなたはAさんに早く所有権移転登記をするように何度も催促したのですが、Aさんは登記手続きをやろうとする気はないようで、あなたは困り果ててしまいました。

このような状況の時に債権者(あなた)が、債権を保全するために、債務者(Aさん)の登記申請する権利を、債権者が債務者に代わって行使する事ができるのです。これを「代位による登記」と呼びます。

代位による登記は、Aさんの関与なくできますので、Aさんの立場からみれば、まさに「勝手に所有権移転登記がされた」状態となるでしょう。

 

② 法定相続分による相続登記

相続が開始されますと、通常は遺産分割協議を行い、各遺産の帰属を確定させ、名義変更を行います。これは不動産でも同じ事です。

ですが、遺産分割協議前でも、各相続人の法定相続分で登記を行う事も可能です。さらにこの場合は、相続人の一人からでも登記をする事が可能となっておりますので、この法定相続分による登記に関与しなかった相続人から見ると、「勝手に所有権移転登記がされた」状態となります。

なお、この法定相続分による相続登記について、実際に不動産を相続する予定の人が非常に不安に思われている事があると、私は耳にした事があります。

つまり、「法定相続分の登記を行う事により、自分が不動産を取得する事が出来なくなるのではないか」と言う事です。

具体例をご紹介します。

被相続人Aさんが亡くなり、相続人は妻のBさんと子供のCさんとDさんです。

遺産は現在Bさんが住んでいる自宅と預金です。遺産分割協議を行うまでは全ての遺産はBさんが管理している状態です。

相続人全員で遺産分割協議を行い、自宅はBさんが、預金をCさんとDさんで分けるという事にしました。

遺産分割協議書の作成やその後の相続登記の為に、司法書士の下を訪れたBさんは、その司法書士からとんでもない事を聞かされました。

「遺産分割協議書に相続人全員が署名押印して相続登記が完了するまでの間、CさんとDさんが他の司法書士に依頼して、法定相続分による登記を行う可能性がある。その為、相続登記が終わった後に、Bさんが管理している預金をCさんとDさんに渡した方が良いですね。」

これを聞いたBさんは大パニックです。「自宅が自分の物では無くなる可能性がある!」その為、Bさんはとくかく先に不動産を相続登記をしたいと言い出し、その伝え方も良くなかったのか、結果としてCさんDさんととケンカになり、もめる相続に発展した、と言う話もあります。

確かに、不動産を相続予定の人にしてみれば、勝手に法定相続分による登記をされてしまったら、不動産が自分の持ち物ではなくなり、追い出されてしまうのでは?と言った不安もあるでしょうが、基本的にはそのような問題は発生しませんのでご安心下さい

まず、法定相続分による相続登記も登録免許税と言う実費がかかります。数万円から数十万円かかります。

また、法定相続分で登記されると言う事は、それぞれ相続分で登記され、不動産が共有状態になると言う事です。その後に遺産分割協議が整えば、単独名義で所有権移転登記をする事は可能です。

さらに、他の相続人がその相続分を第三者に売却するのでは?と言うご不安もあるかもしれませんが、基本的に持分だけを買いたいと言う人はほとんどいません。

なぜなら、持分だけを取得しても不動産全体を処分する事は出来ませんし、また固定資産税の納税義務も発生します。活用する事が出来ない、しかし税金の納税義務は発生する、そのような不動産を誰が持ちたいと思いますか?

これは司法書士試験では良く出てくる論点で、確かに理論上は相続人の一人からの法定相続分による相続登記は可能です。しかし、現実は持分を取得したとしてもほぼ意味は無いのです。

(相続人間の仲が相当悪く、嫌がらせの意味として法定相続分による相続登記が行われる、と言う事が無い事は無いかもしれませんが、登録免許税と言うお金をかけてそんな嫌がらせを行うのか?と言う疑問があります。)

もし、司法書士から「他の相続人が法定相続分による相続登記を行う可能性がある」とその理由も述べずに説明してきたら要注意です。

その司法書士は、勉強しかした事がない、実務を全く知らない司法書士である可能性が限りなく高いでしょう。

③ 権利証と印鑑証明書を偽造されてなされた登記

いわゆる、所有者に成りすまして不動産を売却し、登記がされた状態です。本当の所有者からみれば、正に「勝手に所有権移転登記がされた」状態です。

いわゆる「地面師」が行う手口で、建物がない更地で、かつ担保権が一切設定されていない不動産が狙われます。

 建物があれば仲介を頼まれた不動産会社等が何かの拍子にその建物を訪れ、本人確認をする可能性があり、所有者の成りすましはバレる可能性が高くなります。

また、担保権が設定されていますと、売却に伴ってその担保権者である金融機関等と調整を行う必要があります。この段階でも所有者の成りすましはバレる可能性が高いのです。

その為、所有者に成りすまして他人の不動産を売却する場合、「更地でかつ担保権が設定されていない不動産」が圧倒的に多いのです。

④ 権利証と印鑑証明書を盗難されてなされた登記

この場合も所有者に成りすましての登記を行う事が可能ですので、「勝手に所有権移転登記がされた」と言えます。

逆を言えば、権利証と印鑑証明書(印鑑カード)及び実印が揃う事で、不動産の所有者に成りすます事が可能になるのです。

その為、権利証と印鑑証明書(印鑑カード)、実印は別々の場所で保管するようにしましょう。

⑤ 登記に必要な書類を何らかの事情で渡してしまい、その結果なされた登記。

騙されて登記に必要な書類を渡してしまった場合等がこのケースに該当します。

「そんな事あるの?」と思われるかもしれませんが、実際にあります。

私が知っている情報では、自宅が母名義で三人の子供(娘)がいるケースでした。

高齢の母親は認知症等ではなかったのですが、身の回りの事を自分で行うのが難しく、娘達にまかせっきりだったそうです。

そんなある日、娘達から「固定資産税が安くなる制度があるんだって。その手続きで権利証とお母さんの印鑑カードが必要になるから、預かってもいい?」と言われたそうです。

母は「税金が安くなるなら」と簡単に娘達の話を信じて、権利証と印鑑カードを渡したそうです。その後どうなったのか、大体想像できますよね?

これも、そもそも所有権を移転する意思が無かったのですから、「勝手に所有権移転登記がされた」と言えます。

 

2.勝手に所有権移転登記をされた場合の対処方法

 

まず、上記①と②に関しては、対処方法は有りません。所有権移転と言う実態はきちんとあり、本来行使できる権利を他人が行ったに過ぎないからです。

(ただし、②は上述したとおり、ほとんど心配する必要はありません。)

③~⑤に関しては、所有権移転と言う意思表示が有りませんので、争う事は可能です。ただし、相手方が任意に登記の抹消に応じないのであれば、裁判を行う必要があります。

また、これ以上名義を変更されるのを防ぐため、裁判所に対して「処分禁止の仮処分」を申し立てるのも必須です。

立証方法は、
③に関しては偽造された権利証、印鑑証明書(法務局に書類が保管されているはずです)
④に関しては、盗難された事実
⑤に関しては、登記に必要な書類を渡す必要があった事、所有権移転の意思が無かった事実、と言った感じになります。

なお、お気づきだと思いますが、⑤の立証が非常に困難、ほぼ不可能です。裁判所から見ても「所有権移転の意思があったからこそ、登記に必要な大切な書類を渡したに違いない」と事実認定される傾向が強いです。どんなに信用できる人間であっても、権利証、実印、印鑑証明書は理由無く渡さないで下さい。

3.まとめ

まずは大切な権利証等は、金庫等に大切に保管して下さい。また、万が一盗難された場合は、速やかに警察に届け出るようにして下さい。

不幸にも勝手に所有権移転登記をされた場合は、早急に当事務所やお近くの専門家にご相談をして下さい。

時間が経過すれば経過する程、問題の解決が難しくなりますので、早急なご対応をお勧めします。
 

 

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