相続人が勝手に実家を売却しようとしている場合

こんにちは。横浜市泉区の相続専門司法書士の甲斐です。今回の記事は、相続された実家を勝手に売却されそうになっている事について、ご相談されたい方向けの記事です。(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:私には今年で80歳になる母親がいます(父は既に他界しています)。母は自宅で一人暮らしをしているのですが、先日三男より、「兄が実家を売却しようとしている。既に売買契約が締結されており、後は引渡しを待つのみの状態である」と言う連絡を突然もらいました。

兄にどう言う事なのか事情を確認しようと連絡を取ろうとしたのですが、こちらからの連絡は一切無視して、現段階では話は出来ていません。

実家は元々父名義だったのですが、父が亡くなった後、特に相続の手続き等は行っていないはずです。この場合、父の相続人である私が自宅の売却に反対すれば、問題はないのでしょうか?

 

1.不動産の一般的な売却手続き

まず、不動産の一般的な売却手続きを説明します。不動産を売却したい場合、不動産会社に仲介を依頼し、不動産会社が買主を見つけ、売主と買主が合意すれば売買契約の締結、残金決済、不動産の引渡しと言う流れになります。

そして登記の依頼を受けた司法書士は不動産の所有者を買主名義に変更する為の登記(所有権移転登記)を行うのですが、この時に登記手続きに必要で売主が用意すべきものとして、

・登記済証(若しくは登記識別情報)
・発行後、三ヶ月以内の印鑑証明書
・実印(登記申請書若しくは司法書士の委任状に実印で押印が必要)

があります。つまり、上記の3点が無ければ、原則売買に基づく所有権移転登記は行う事が出来ません。

 

2.事例の対応方法

まずは実家の不動産登記事項証明書を法務局で取得し、現在の所有者が誰になっているのかを確認する事が重要です。

① 実家の相続登記がまだされていない場合

事例では、そもそも実家の名義は亡きお父様の名義とのお話です。登記事項証明書を取得し、自宅の所有者がまだお父様のままであれば、自宅は相続財産となり、相続人全員の共有となります。

相続人全員の共有状態であれば、相続人である相談者を無視して勝手に自宅を売却する事は出来ません。なお、念の為に実印と印鑑カード(印鑑証明書)の管理をしっかり行う事をお勧めします(実印と印鑑カードを持ち出されたら、虚偽の登記がされる可能性が高くなるからです)。

② 相続登記がされていた場合

相続人である相談者の関与が無く、他の相続人名で相続登記がされていた場合は、最終的には相続登記を抹消する訴訟及び処分禁止の仮処分を行う事を考える必要があります。

まずは相続登記がなされた経緯を調べる必要があります。事例の場合であれば、お母様や他の相続人への事情徴収、相続登記がされた管轄法務局へ出向いて、当時の申請資料の確認等を行い、裁判をする、しないの判断を行う必要があります。

なお、相続登記がお母様名義でなされた場合、お母様に事情を説明し、お母様が自宅を売却する意思が全くないのであれば、権利証(登記識別情報)や実印を絶対に他の相続人に渡さない事を伝える必要があります。

 

3.まとめ

相続が発生すると、各相続人の思惑が先行し、遺産の勝手な処分がなされる事が良く有ります。不動産も例外ではありません。

少しでもおかしいと思ったら、まずは登記事項証明書を確認するようにして下さい。それが被害を未然に、若しくは最小限に防ぐ事の第一歩となります。

当事務所ではこのような登記に関連する訴訟(勝手に所有権移転登記された不動産)に関するご相談を承っております。勝手に登記をされてお困り、お悩みの場合は、お気軽にお問い合わせ下さい。

なお、勝手に登記をされた場合の対処方法はこちらもご参照下さい。
勝手に所有権移転登記をされた場合の対処方法

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

合格率2~3%台の司法書士試験を、4年間の独学を経て合格。

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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