唯一の遺産である自宅を相続したい場合(代償分割)

相続・家族信託の専門家

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回の記事は、代償分割についてご相談、ご依頼されたい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:数ヶ月前に父が亡くなりました。

父の遺産と言えば自宅ぐらいなものなのですが、相続人が私を含めて3人おり、遺産分割協議がなかなかまとまらず困っています。

私としては思い出がある自宅ですので、私が相続して居住を続けたいと思っているのですが、他の相続人はお金が欲しいようで、自宅を売却してその売却代金を相続分で分配したいと考えています。

この遺産分割協議がまとまる良い方法は何かありますでしょうか?

A:相続財産(自宅)を相続する人が、他の相続人の方に代償金を支払う、『代償分割』と言う遺産分割の方法が考えられます。

1.代償分割とは?

代償分割とは、事例のように分割する事が出来ない相続財産があった場合に、その相続財産を一人(もしくは複数)の相続人が相続する代わりに、相続しなかった相続人が代償金の支払いを受ける事により、結果として相続人間の公平を保つ遺産分割の方法の一つです。

その他の遺産分割の方法として、相続財産をそのまま分割する「現物分割」、相続財産を売却等で換価して、それを相続人間で分配する「換価分割」があります。

代償分割は事例のように、特定の相続財産についてどうしても相続したい相続人がいる場合に使用される事が多く、不動産の他に分割しにくい自社株でも利用される事があります。

2.代償分割のメリット・デメリット

① メリット

代償分割の一番のメリットは、相続人間の不平等さが無くなる点です。

相続財産を取得する相続人は自分の希望を叶える事が出来ますし、代償金を受け取る側の相続人もきちんと自己の相続分相当の権利を取得する事が出来ます。

また、相続財産を換価する手間を省略出来るのもメリットです。

② デメリット

相続財産を取得する側の相続人に、代償金を支払う事が出来なければ代償分割を行う事は出来ません。

また、相続人全員が代償分割を行う事に対して合意していなくてはいけません。

3.遺産分割協議の記載方法

遺産分割協議書内に代償分割を行う事をきちんと明記する必要があります。

代償分割である事を明記していない場合、代償金の支払いが贈与であるとみなされてしまい、代償金を受け取った側に贈与税が発生するおそれがあります。

【遺産分割協議書の記載例】

 

1.相続人山田太郎は次の遺産を取得する。

【土地】
所    在  横浜市泉区和泉中央北南三丁目
地    番  123番4
地    目  宅地
地    積  123.45㎡ 

【建物】
所    在  横浜市泉区和泉中央北南三丁目123番地4
家 屋 番 号  123番4
種    類  居宅
構    造  木造スレート葺2階建
床 面    積  1階 55.12㎡
        2階 50.23㎡

2.山田太郎は、第1項記載の遺産を取得する代償として、山田次郎に平成○年○月○日 までに、金10,000,000円を支払う。

4.相続税の支払について

上述のとおり、きちんと遺産分割協議書に代償分割である事を明記すれば、相続税の支払いについては通常の遺産分割時と何ら異なるところはありません。

ただし、代償金を支払う相続人は、代償金と併せて(基礎控除を超えて相続税の納付義務がある場合)相続税の負担もある事を検討して、最終的に代償分割を選択するようにしましょう。

5.まとめ -やはり相続対策が必要-

主だった遺産が自宅のみである事は、相続が発生する前から分かっているはずです。

その為、被相続人になる方は自宅を相続したい人がいるのかをきちんと家族間で話し合い、相続したい人に対して遺言書を残し、その方がきちんと他の相続人に代償金を支払う事が出来るように、自宅を相続する相続人を受取人とした生命保険に加入する等の相続対策を行う事が重要となります。

「自分が亡くなった後の事は子ども達が勝手にやってくれる」と思うのでなく、残されるご家族が困らないように、最善の相続対策を元気な内に行っていきましょう。

当事務所ではご相談者の方のご事情に合わせた相続対策をご提案させて頂いております。

相続の事でお困り、お悩みの場合はお気軽にご相談下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
(詳細なプロフィールは名前をクリック)

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町田・横浜FP司法書士事務所
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