
こんにちは。司法書士の甲斐です。
今回は、複数の土地(不動産)を所有している地主さん向けの記事を書きます。
私の事務所がある地区は、昔からの地主さんが多く、いざ相続が発生した場合に、

遺産のほとんどが土地で、どうやって分ければ良いか分からない!

相続税を納税する為のお金がないんですけど・・・。
と言った、相続人の方からのご相談が一定数あります。
このようなご相談の時、必ず心の中で思うんですよね。
「もっと早めに相続対策をしていれば、問題を回避する事ができたのに・・・。」
地主さんは結構おおざっぱな方が多く、相続について
「まぁ、何とかなるでしょ」
と思われて何も行わず、結果残されたご家族が困り果てて、右往左往してしまうのです。
ハッキリ言います。
地主さんは普通の人以上に、相続の事を真剣に考えなくてはいけないのです。
このページで地主さんがやるべき相続対策を簡単にお話ししますので、
地主さんは勿論、この記事をご覧になられている、地主さんの息子(娘)さん、この記事を是非ご両親に紹介して、しっかりと相続対策を行うようにして下さい。
1.不動産の現状把握
① 登記事項証明書で不動産の現状確認
まずは現在所有している不動産がいくつあるのか、不動産の権利関係はどうなっているのかを、登記事項証明書で確認しましょう。
登記事項証明書は昔の言い方で「登記簿謄本」と呼び、不動産の現況や権利関係をまとめた書類になります。
不動産の権利証や毎年役所から送付される、固定資産税納税通知書等に記載の不動産の地番や家屋番号を参考にして、近くの法務局で登記事項証明書を取得しましょう。
② 相続税の額を算出
続いては、大雑把で構いませんので、相続税が現段階でどれだけ発生するのかを計算します。
相続税の基礎控除額は、下の計算式で求めます。
この金額を超えるかどうかを確認する事が、相続対策の第一歩になります。
なお、基礎控除額を超えたとしても、各種特例を利用すれば相続税を減額する事ができますので、税理士に相談し相続税の額を把握するようにして下さい。
③ 相続税が支払えるのか?
基礎控除額を超えて、相続税の納税義務がある場合、きちんと支払えるのかも確認します。
私の経験上、地主さんは土地は沢山持っているのですが、現金はあまりないケースがあり、相続税の納税資金の確保に相続人の方が苦労されています。
納税資金の確保は後回しにすればするほど、残されたご家族が苦労する事になり、場合によっては自宅を手放さなくてはならない状況になるかもしれません。
納税資金の確保は最優先に行いましょう。
④ 家族が相続で困らないか?
考えるべきは相続税の事だけではありません。
相続対策=相続税対策ではありませんので。
不動産を残された相続人が、不動産の事で困らないか?と言う視点も重要になってきます。
不動産は預貯金と比較して、管理が非常に大変になります。
その為、最近では不動産の事を「負動産」と揶揄される事もありますので、相続人の意向もしっかりと確認した方が良いでしょう。
2.具体的な相続対策
① 不動産に優先順位をつける
相続税対策と同時並行で、現在所有している不動産について優先順位付けをしていきましょう。
色々な優先順位のつけ方がありますが、大きく分けて下記3つに区分するのが良いと思います。
A 絶対に残したい(手放したくない)不動産
まだ家族が住み続ける必要がある自宅や、収益性が高いアパート等が該当します。
自宅に同居している家族がまだいる場合、余程の理由がない限り自宅を処分する必要性は少ないでしょう。
しかし、自宅が広すぎて掃除や管理が大変!と言う状況であれば、自宅を売却して丁度良い広さのマンションに引っ越す、と言う選択肢も考えられます。
また、例え空き室になってもすぐに入居者が決まるアパートやマンションは、安定的な収益を生み出してくれますので、手放さない方が良いと言う結論になります。
B 有効活用が可能な不動産
現段階では思うような収益がないけれど、将来的に収益が発生する可能性がある不動産等が該当します。
実際には予測は難しいのですが、不動産会社に相談をしたり、市役所等で都市計画を調べる事で判明する場合があります。
C 売却を検討すべき不動産
現段階で有効活用できていなかったり、上記A、Bに該当せず、相続税の納税資金確保の為に売却を行う必要がある不動産等が該当します。
活用していなくても長年所有している不動産であれば、それなりの愛着もあるかもしれません。
しかし、家族の方がもめない相続、困らない相続の為にも、きちんと整理すべきでしょう。
② 自宅の広い敷地の対応
所有している不動産の優先順位をつけ、処分すべき不動産は処分し、整理していく方向性で基本的にはOKです。
一方で自宅の敷地についても何らかの対応が必要になってくる場合があります。
なぜかと言いますと、自宅を相続した時に使える相続税の減税制度「小規模宅地等の特例」を利用する場合、居住用で限度面積は330㎡で、その面積を超えた部分は特例を利用できないからです。
その為、自宅の敷地があまりにも広い場合、状況によっては分筆の上第三者へ売却等の対応を行うと言う方法が考えられます。
3.まとめ
以上、地主さんが絶対に行うべき相続対策を簡単にまとめてみました。
なお、不動産が関連する相続対策は様々な視点から行う必要があり、横断的な専門知識が不可欠です。
その為、一人の専門家だけでは適切なアドバイスを行う事は難しく、司法書士、不動産会社、税理士等が連携して相続対策を行う必要があります。
地主さんの相続対策が成功する鍵は、まさにこの「様々な視点で行う」事にあります。
不動産の相続対策を相談される場合、必ず複数の専門家にご相談するようにして下さい。