
こんにちは。司法書士の甲斐です。
相続財産の代表的なものが「不動産」、つまり「実家」です。
総務省統計局の調査の一つ「家計調査」の結果を見てみても、年齢が高くなればなる程、持ち家比率が高くなり、60歳以上では約90%に達する程です。
つまり、実家と相続の問題は切っても切れない関係にありますので、実家の相続について注意すべきポイントを知っているか知らないかは、今後の実家の相続問題について、大きく結果が異なってくる事は間違いありません。
そこで今回は、もめない相続とする為に、実家の相続について注意・気をつけるべきポイントをお話していきたいと思います。
1.共有名義にはしない
両親が亡くなり実家が空家になってしまった場合、実家を誰が相続するのかは非常に大きな問題になります。
子供達は独立して各自の家庭を持ち、マイホームを購入している事だってあるでしょう。そうすると実家に誰も住むわけではないので、誰が相続するのか?
別にもめているわけではないのですが、実家を誰が相続するか意見がまとまらない、と言うお話を良く耳にします。
そうすると、話をするのがだんだん面倒くさくなって、「取りあえず共有名義にしちゃおうか?」と兄弟姉妹間で決められるご家庭もあるのですが、共有名義で相続する事は、問題の先延ばしでしかありません。
不動産を共有名義にして、そのまま放置してしまえばどうなるのか?
相続人も年をとりますので認知症になるかもしれません。そうなったら、実家の処分に手間がかかってしまいます(後見制度を利用する必要がある為)。
また、相続人が亡くなる事もあるでしょう。そうすると共有者がどんどん増えていく事になります。
共有者が増えていけば、実家の処分はやはり手間がかかってきます。場合によっては全員の意思統一が出来なくて、事実上、実家を処分する事が出来なくなるかもしれません。
このように、実家を共有名義で相続する事は後から数々の問題を発生させる危険性があるのです。
すぐに実家を売却する等の事情がない限り、実家を共有で相続する事は避けた方が良いでしょう。
2.相続登記は早めに行う
実家を誰が相続するか、相続人間で話がまとまっても、その相続登記を行わないご家庭があります。
相続登記は期限はありませんし、登録免許税と言うお金が発生します。
また司法書士に手続きを依頼した場合、司法書士の報酬も発生しますので、やはり面倒になって相続登記を行っていないと思われるのですが、相続登記を放置する事も、様々な問題が発生する可能性があるのです。
神奈川県司法書士会が作成しているチラシの例をご紹介してみます。
相続が発生し、相続人は息子の兄Aと弟Bです。二人は実家を誰が相続するのかを話し合ったのですが、結局Aさんが相続する事になりました。「実家は兄さんに譲るよ」とBさんがいったのです。
なお、これは口約束で遺産分割協議書は作成していませんでした。当然、相続登記も行っていません。
その後、不幸にもBさんが亡くなってしまったのです。
ここで、AさんとBさんの相続人であるBさんの奥さんが法律上の主張をしてきたのです。
AさんとBさんの話し合いはあくまで口約束であり、遺産分割協議書も作っておらず、相続登記もしていない。
だからAさんが相続した事は認めない。
Bさんの奥さんはBさんの相続人ですので、実家も法律のルールに従って、きっちりと分けるべきだ、とBさんの奥さんが主張してきたのです。
このような状況になってしまえば、もう後の祭りです。
問題を解決する事は非常にやっかいになります。
少しの時間、手間を惜しんだ結果、後々重大なトラブルに発展する事は良くあります。
重大なトラブルを防止する為にも、相続登記はきっちりと行うようにしましょう。
3.実家以外の財産が無い場合はしっかりと事前の対策を
目ぼしい財産が実家のみで、相続人に平等に相続財産を分ける事が出来ない事が分かっている場合は、事前にどうするか話し合いをした方が良いでしょう。
実家を売却して売買代金を相続人で分けるのか、それとも誰か一人が相続して、その相続人が他の相続人に相続分に該当する金銭を支払うのか、実家を売却出来ない時はどうするのか?等
早め早めに話し合い、後からもめない環境を作るのがとても重要になってきます。
4.まとめ
ほとんどの方にとって、実家の相続は避けては通れません。
避けては通れないのだからこそ、しっかりとやるべき事を行う事が、後々のトラブルを未然に防ぐ事につながるのです。
少しの手間と時間をかけて、将来の大きな問題の芽をつむようにしましょう。