相続法改正によって自筆証書遺言の要件がどの程度緩和されるのか?

遺言遺言

こんにちは。司法書士の甲斐です。

令和元年7月は改正相続法の多くの条文が施行されました。

これによって相続のルールが大きく変わってくると思いますので、しばらくは勉強を怠らないようにしたいと思います。

ところで、今年1月に施行された改正相続法はご存知ですか?

そう、自筆証書遺言の要件の緩和です。

法律が改正される前は、自筆証書遺言は全文を自書する必要があり、パソコン等を用いて作成された遺言書は無効となりました。

しかし、全文を手書きするとなると非常に大変ですので、いざ「書こう!」と思っても、その大変さに結局心折れた人もいるはず。

今回の改正では、その自筆証書遺言を作成しやすくする為に、自筆証書遺言の要件が緩和される事になったのです。

1.自筆証書遺言の改正(緩和)された内容

ザックリと説明しますと、自筆証書遺言は、自筆が原則と言う事は変わらないのですが、例外として、別紙形式の「財産目録」に関しては自書する事は要しない、と定められました。

(新法第968条2項)。

「自書する事を要しない」つまり、形態そのものの制限がなくなった為、財産目録についてはパソコンで作成しても良いですし、不動産の登記事項証明書や、通帳のコピー等でもOKとなりました。

財産目録を使って遺言を作成する場合の具体的な文言は、例えば

「別紙財産目録1記載の財産をAに相続させる。」
「別紙財産目録2記載の財産をBに遺贈する。」

等の記載方法が考えられます。

元々、自筆証書遺言は誰でも簡単に書ける反面、死後に遺言者本人にその意思を確認する事が出来ないため、自筆する事を法律で厳格に定めていました。

しかし、自筆性を厳格に定めた結果、「誰でも簡単に」と言う長所を奪い取ってしまう事になります。

また、今後の超高齢化社会を迎える事も考え、「誰でも簡単に」自筆証書遺言を作成する事が出来るように、自筆要件が緩和される事になったのです。

2.自筆証書遺言の財産目録の注意点

① 財産目録はそのページごとに遺言者の署名・押印が必要になる。

自筆ではない財産目録を添付する場合、財産目録の全てのページに遺言者の署名・押印が必要になります。

全てのページですので、例えば財産目録として登記事項証明書を10ページ添付した場合、10ページ全てに署名・押印が必要になります。

なお、署名・押印がなければ、遺言は無効になります。

② 財産目録の訂正方法は、通常の自筆証書遺言と同じ

自筆証書遺言の訂正方法は、

「遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない」(新法第968条3項)

とされています。

これは改正前の条文と同じ規制で、その規制を自筆を必要としない財産目録にも要求しています。

なお、この変更方法を行わない場合、変更等が無効になるだけで、自筆証書遺言そのものが無効になるわけではありません。

③ 契印は必要ないのか?

ここで素朴な疑問が出てきます。

遺言の枚数が複数に渡る場合、そのページごとに「契印」は必要ないのか?という点です。

この話は若干複雑になるので、結論から言いますと、契印がなくても自筆証書遺言は有効と判断された判例があります。

でも、問題を未然に防ぐ為に遺言を作成するのですから、契印は行った方が良いでしょう。

3.まとめ -実務の影響はどうなる?ー

今回の改正により、自筆証書遺言が以前と比べて書きやすくなりました。

財産を沢山持っている場合、その財産を一つ一つ手書きするのも非常に大変ですので、それが緩和されるだけでも手間が省けるでしょう。

しかし、遺言で重要な

「実際に相続が発生した場合の遺言執行」
「遺言無効の訴え」

に耐えうるかどうかと言う点に関しましては依然として公正証書遺言の方が優れている場合があります。

その為、今回の自筆証書遺言に関する改正は、

・あくまで遺言を書きやすくする事がメインである事。
・今回の改正でも遺言執行が不能になったり、遺言無効の訴えを提起される可能性が劇的に減るわけではない事。

これらを踏まえた上で自筆証書遺言を作成する必要があるでしょう。

なお、当事務所では遺言に関するご相談・ご依頼を積極的に承っております。

「遺言の事を勉強したけれど良く分からない」とお悩みの方は、お気軽にご相談下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格も持つ「もめない相続の専門家」
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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