ご両親に教えてあげよう!自筆証書遺言でやりがちな致命的なミスとは?

遺言

この間、横浜に新しく出来た本屋に行ったんですけど、終活コーナーが充実していて、「遺言作成キット」も沢山ありましたよ。

自筆証書遺言ですね。自筆証書遺言は専門家の関与を必要としないで、遺言者本人が作成する事が出来る、いわゆる「お手軽」な遺言で、非常に敷居が低いモノなんです。

じゃあ、遺言書作成キット使ってその他の書籍やインターネットで情報を集めれば、間違いがない遺言を作成する事ができるって事ですね。

うーん、実はそうとは言い切れないんです。専門家が関与せず見よう見真似で遺言を作成した結果、とんでもないトラブルになっている事例も存在するんです。

 

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回は自筆証書遺言で良くありがちで、かつ致命的なミスをご紹介していきたいと思います。(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

現在、書店等で遺言作成キットが販売されている事もあり、遺言書の作成が身近なものになりました。

お手軽に遺言書を作成出来るようになった反面、市販の遺言作成キットを作成する事により、新たな紛争の火種になるケースもあります。

今回は自筆証書遺言ではあってはならない致命的なミスをご紹介していきたいと思います。

紛争を未然に防ぐはずの遺言が、紛争の元にならないようにご注意下さい。

1.そもそも法定の要件を備えていない。

① 日付がない

遺言書に日付の記載が必要な理由は、

・遺言者の遺言能力の有無を確定し(遺言作成時に認知症等ではなかったか?等)
・複数の違った内容の遺言書が出てきた場合、成立の先後を判断する(後の遺言で先の遺言が撤回出来る)

と言う事が挙げられます。

日付けの記入は自筆証書遺言に必要な要素の一つですが、この日付けが全くない、もしくは不十分な自筆証書遺言が良くあります。

【例】
・3月2日(年がない)
・平成3年4月吉日(「吉日」では日付の特定が不明確)

このような遺言は無効となり、相続人間で紛争になってしまう理由になるかも知れません。

日付が不明確なため、遺言の無効が争われた裁判例は良くあり、場合によっては遺言が有効と判断されたケースもあるのですが、無用なトラブルを防ぐため、日付は正確に記載しましょう。

② 自筆ではない

自筆証書遺言はその名のとおり、遺言者が全文を自筆しなくてはいけません。

ですが、「面倒だから」と言う理由から、全文をパソコンで作成したり、財産目録をパソコンで作成されている方が見受けられますが、全文を自筆していない自筆証書遺言は無効となりますのでご注意下さい。

なお、平成31年1月13日より、財産目録に関しては自筆しなくても良い事になりました。

2.遺言の趣旨が不明確

① 遺産の特定が不明確

遺言に記載した遺産の特定が不明確な為、後々トラブルになるケースがあります。

【例】
・横浜市泉区中田北南三丁目245番地5の建物は長男〇〇に相続する。

遺言者は自宅を長男に相続させたかったみたいですが、では、この遺言のどこに問題があるのか考えてみましょう。

えーと、・・・特に問題がないように思えるんですけど。

通常、「自宅」とは土地と建物の事を指しますが、この遺言書には「建物は~」と記載されています。

つまり、この遺言を厳格に解しますと、建物のみ長男が相続出来るのですが、その敷地である土地は他の相続人が相続出来る事になります。

場合によっては他の相続人が土地を相続して、「土地を売却したいから建物を取り壊せ」と言ってくる事も出来るのです。

その為、遺産はきちんと特定する必要があります。

不動産であれば登記事項証明書のとおり(もしくはそれに準じた記載)、預貯金であれば銀行名、支店名、口座番号をきちんと記載する必要があります。

なお、弁護士によっては「自宅は〇〇に相続させる」と言う表記で良いとおっしゃられる方がいらっしゃいますが、これは明確に間違いです。

「自宅」と言う表記では遺産が特定されておらず、相続登記は出来ません。

これは不動産登記の実務を行っていないと、分からない点ですね。

その通り。なお、「自宅」と記載された遺言をもとに相続登記を行う場合、上申書(遺言書に書かれた「自宅」は〇〇の不動産に間違いありません、と言った趣旨の書面)が要求されて、それに相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書を添付する必要があるです。

「なんだ、『自宅』と書いても上申書さえ提出すれば結局問題ないじゃない」と思われている方、いらっしゃいませんか?

上記を良く見て下さい。

上申書は相続人全員分が必要になります。

遺言は遺産分割協議ができない事を前提として作成される場合があります。

それなのに相続人全員の手続きが必要な状態にしてしまう事は本末転倒ですし、もし相続人の中の一人でも上申書をもらえない場合、手続きを行う事が不可能となります。

② 遺言の趣旨が不明確

遺言者とすれば、「相続させる」と言う意味で記載した文章が、相続させると言った意味ではないと相続人間で争われる事があります。

【例】
・〇〇を長男にまかせる。
・次男は××を頼む。
・三男に△△を委ねる。

「こんな遺言って本当にあるの?と思われるかもしれませんが、結構目にします。「〇〇に管理させる」なんて遺言(?)もありました。

「まかせる」「頼む」「委ねる」では、その趣旨が不明確な為、その遺産の帰属をめぐり相続人間で紛争が繰り広げられる事があります。

3.まとめ

遺言書の書き方って、本やインターネットで丁寧に解説されているはずなのに、ミスをする人って結構いるんですね。

自筆証書遺言は1人で気軽に作成できるけど、専門家が全く関与しなくても作成できる為、遺言の内容が間違っていてもそれに気がつかない人が多いのが現状なんです。「分かんないから、別にこれでも良いや。なんとかなるでしょう」が通用しないのが遺言の世界なんです。

遺言の趣旨や遺産の特定が不十分な場合、その解釈を巡って相続人間の対立が激しくなり、修復不可能なレベルになる可能性があります。

もう一度お伝えしますが、「分かんないから、別にこれでも良いや。なんとかなるでしょう」が通用しないのが遺言だと思って下さい。

家族の為を思って作成した遺言が、家族の仲を切り裂くと言う事がないように、遺言に関しては一度で構いませんので、専門家にご相談するようにして下さい。

当事務所でも、後々問題にならないような遺言作成のアドバイスを行っています。お気軽にお問い合わせ下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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