遺産分割調停のデメリットとは?

遺産分割協議・調停

こんにちは。司法書士の甲斐です。

相続人間でもめている等、遺産分割協議がどうしてもまとまらない時に弁護士等に相談すると、ほぼ間違いなく「遺産分割調停を行うしかない」とアドバイスを受けると思います。

現実問題として遺産の分け方についての問題を解決を行うのであれば、遺産分割調停や審判を行うしかありません。

しかしながら、遺産分割調停の実際の進め方やそのデメリット等を丁寧に説明してくれる専門家が少なく、いざ遺産分割調停を行ったら、後から「こんなはずじゃなかったのに・・・」と後悔される方もいらっしゃいます。

そこで今回は、専門家でも中々丁寧に教えてくれない、遺産分割調停のデメリットのお話をしていきたいと思います。

1.時間(期間)がかかる

各ご家庭が抱えていらっしゃる相続問題の内容にもよりますが、遺産分割調停は調停成立まで時間がかかります。

概ね半年から1年間ぐらいはかかりますので、長期戦になる事をまずは覚悟する必要があります。

2.法律上の主張しかできない

遺産分割調停は家庭裁判所を利用する手続きですので当たり前と言えば当たり前なのですが、(相手の同意が無ければ)法律上の主張しかできません。

例えば遺産分割調停を行うわけですから、自身の相続分が法定相続分よりももっと貰えるはずだと言う考えがあると思います。

この場合に法定相続分を修正する制度は寄与分ですが、逆を言えば、寄与分に該当しなければ、遺産分割調停の中で取り扱う事は不可能だと言う事です。

現在は遺産分割調停の事を解説した書籍やWebサイトが充実していますので、

「遺産分割調停は裁判のように白黒決着をつける制度ではなく、あくまで話し合いである」

と言うイメージを持たれている方も多いと思います。

しかし、この「話し合いである」と言う言葉が独り歩きして、「何でもかんでも主張する事ができる」と勘違いされている方がいらっしゃるのですが、これは誤りであり、あくまで法律上の主張を行う必要があります。

3.法律上の主張を行う場合、証拠が必要になる

地方裁判所等で行う民事訴訟と同様、法律上の主張を行い、相手がそれを争うのであれば、その主張に対する証拠が必要になります。

例えば被相続人の介護を行った事により寄与分を主張されたいのであれば、1日何時間介護を行ったのか、どのような介護を行ったのか、何年間行ったのか等、主張に対する証拠が必要になります。

その証拠がない場合、法律上の主張が認められない可能性も出てきます。

4.法律上の主張でも取り扱ってくれない場合がある

遺産分割調停は法律上の主張を行う必要がある、とご説明しましたが、実は法律上の主張であっても当事者間が合意しなければ、調停の中では取り扱ってくれないモノもあります。

例えば、

・遺言者が遺言書を作成した当時、認知症で意思能力がなかった。だから遺言書の無効を主張したい場合。
・相続人の一人が遺産の使い込みをした事が疑われる場合。
・遺産の中の一つの財産について、ある相続人が実は自分の財産であると主張する場合。

これらは法律上の主張ではあるのですが、遺産分割調停で遺産の分割方法を相続人間で決める前に解決しておく必要があるとされています。

その為、もし遺産分割調停の中で上記の問題が解決しない場合には、遺産分割調停を一旦取り下げて、地方裁判所等で民事訴訟等を提起して、この問題を解決してから再度遺産分割調停を申し立てることを家庭裁判所から言われる事があります。

5.調停が不成立になる事がある、希望通りの結果にならない事がある

遺産分割調停は話し合いの場ですので、話し合いがまとまらなければ調停が不成立となり、自動的に「審判」と言う手続きに移行します。

審判は民事訴訟に近い制度で、法律を用いて強制的に当事者間の問題を解決する制度です。

その為、審判まで行ったとしても、一般の民事訴訟と同様に、ご自分の希望通りの結果にならない事だってあります。

6.弁護士に依頼したら弁護士費用がかかる

正確に言いますとこれはデメリットではなく、単純に当たり前の事ですが、弁護士に代理人を依頼すると弁護士費用が発生します。

かかる費用は、弁護士や事件の難易度によって異なると思いますが、数十万円~数百万円ぐらいです。

なお、報酬に関してはトラブルが一番発生しやすい部分です。事前にきちんと説明を受け、どれくらの報酬になりそうかを事前に計算するようにしましょう。

7.相続人間の仲は、結局悪いままになる事もある

元々相続人間でもめていて遺産分割調停を行ったのだから、何を今さら・・・・と言う声が聞こえてきそうですが、遺産分割調停を行って遺産の分け方についての問題が解決しても、相続人間の仲が改善する事は非常に難しいと思います。

(絶縁するつもりで遺産分割調停を行ったのであれば、それはそれで良いとは思いますが)

遺産分割調停は法律上の話し合いを行う場所であり、法律上の主張に対して納得しない相続人は、例え調停や審判が終わったとしても納得する事はなく、一生心の中にモヤモヤしたものを持ったまま生きていかなくてはいけないでしょう。

8.まとめ

以上、思いつくままですが、遺産分割調停のデメリットをお話してみました。

遺産分割調停を行う場合はこのデメリットを十分理解された上で、「こんなはずではなかったのに」と言う事がないようにご利用して下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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