
先生!遺言書について質問してもいいですか?

どんな事ですか?

よくドラマなんかで弁護士が『私は遺言状を預かっています』と言って、封印のされた遺言状をハサミで開封して家族の前で読み上げるシーンありますよね?あれって実務でも行われているんですか?

封印された自筆証書遺言は家庭裁判所で『検認』って手続きが必要で、封印されているのであれば、その検認手続きの中で開封する必要があるんです。

え!そうなんですか!!TVでやっちゃったら、間違って遺言書開けちゃう人、続出するんじゃないですか??

確かに、「TVでやってたから大丈夫」と言う理由で開封しちゃう人はいるかもしれないですね。でも、開封したからといって遺言が無効になるわけじゃないので、その点は安心して下さい。

本当ですか!それは良かった!!

ただし、「過料」と言う罰金みたいなものを科せられる可能性はあります。

・・・結局、封印された自筆証書遺言は勝手に開けちゃダメって事ですね。

こんにちは。司法書士の甲斐です。
遺言書には大きく分けて遺言者自身が作成する「自筆証書遺言」と、公証人が作成する「公正証書遺言」があります。
公正証書遺言の場合は形式上問題になる事はほぼなく、速やかに相続手続きを行う事が出来るのですが、自筆証書遺言は家庭裁判所での手続き『検認』が必要になってきます。
今回は、その『検認』の手続きについてお話したいと思います。
1.自筆証書遺言とは?
遺言には色々な種類がありますが、ご自分で作成できる、一番簡易な遺言が「自筆証書遺言」です。
自筆証書遺言とは、遺言者がその全文、日付、氏名を手書きし、押印する事によって有効に成立する遺言の形式です(民法第968条)。
自筆証書遺言はポイントは以下のとおりです。

元々は全文を自筆する必要があったのですが、法改正により、財産目録については自筆しなくても良くなりました。

『平成3年4月吉日』と書かれた遺言は無効となるって事ですね。

その通り。不明確な日付でも有効とされた裁判例もあるけど、それはあくまで例外的な事なので、年月日は明確に記載するべきだね。
その他、
・事例のように封筒に入れ封をする事までは要求されていませんが、誰にも見られないように封をする事が一般的と思われます。
・遺言の管理は自分で行う必要がある為、どこにしまったか忘れるリスクもあります。
この様に注意すべき点、ポイントが沢山ありますが、それでも誰にも知られず、かつ簡易にご自分の意思を残す事ができるメリットが、自筆証書遺言にはあります。
2.検認とは?
相続人が被相続人の遺言を発見した場合、遺言を家庭裁判所に提出して、検認を請求しなくてはいけません(民法第1004条)。
『検認』とは、相続人に対して遺言の存在、その内容を知らせるとともに、遺言の偽造・変造を防止する一種の証拠保全の為の手続きです。

検認の目的はあくまで保全であり、遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
その為、検認が行われたとしても、その後に遺言の有効・無効を争う事はできます。
3.検認の流れ
① 検認の申立て
相続が開始した地を管轄する家庭裁判所に対して必要書類を記入・提出し、検認の申立てを行います。
『相続が開始した地』とは、被相続人の生活の拠点の事で、通常は住民票に記載されいる場所の事です。
住所が知れないときは、実際に暮らしている居所が住所となります。
申立に必要になる書類は、各家庭裁判所によって多少異なるかも知れませんが、概ね次のとおりです。
⑵ 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本
⑶ 相続人全員の戸籍謄本(相続人の順位によって集めるべき戸籍等が異なります)。
② 家庭裁判所からの連絡
家庭裁判所から各相続人に対し、遺言の検認を行う日時が通知されます。
なお、申立人以外の相続人は、検認を行う日時にどうしても予定があり欠席したとしても、何かの不利益になる事はありません。
③ 検認期日
家庭裁判所は、申立人や他の相続人の立会いのもと、封印されている遺言については開封し、遺言の検認を行います。
注意すべき点は、上記のアンダーラインの部分です。
つまり、封印がされた遺言は家庭裁判所において他の相続人(若しくは代理人)の立会いの下、開封しなくてはいけません。
もし無断で開封してしまった場合は、遺言が無効になるわけではありませんが、5万円以下の過料に処せられます。

ちなみに、他の相続人は検認の期日に絶対に立ち会う必要はなく、欠席する事も出来ます(個人的には、出来るだけ出席した方が良いとは思います)。
④ 検認済証明書の申請
遺言書に基づく各遺産の名義変更を行う場合に必要になりますので、検認済証明書の申請を行います。
4.まとめ
以上、自筆証書遺言を発見した際の流れを簡単にまとめてみました。
遺言書の手続き等は一生に一度あるかないかの手続きですし、色々と知識を勉強したとしても、実際に良く分からない事も発生すると思います。
遺言に関しましてお悩み、ご不明な点がございましたら、お気軽に当事務所へお問い合わせ下さい。