遺言執行者を解任したい場合


こんにちは。横浜のもめない相続の専門家、司法書士/上級心理カウンセラーの甲斐です。

今回の記事は、遺言執行者に不信感があり、遺言執行者を解任したい事についてご相談、ご依頼されたい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
先月亡くなった父の遺言が見つかりました。

父は沢山の種類の財産があり、その財産について誰に相続させるのかが、事細かく遺言に書かれていました。

また、財産の種類が多い為、私達が相続手続きを行う事が大変だと思ったのでしょう、遺言執行者としてとある弁護士が指定されていました。

早速その弁護士に父が亡くなった事と、遺言の執行をお願いしたのですが、もうそれから5年も経過するのに、全然仕事が進んでいないようです。

進捗状況を度々確認しているのですが、「すみません、時間がかかっていまして・・・」と、中々進展していない様子です。

確かに、遺産は沢山あるのですが、それでも時間がかかり過ぎていますので、この遺言執行者を解任したいと思っています。

その手続きを教えて下さい。

 

1.遺言執行者の解任の要件

遺言執行者が解任する事ができる要件は、

・その任務を怠ったとき
・その他正当な事由があるときに

利害関係人(相続人等)が家庭裁判所に対して遺言執行者の解任の請求を行い、家庭裁判所が解任の審判を行った場合です(民法第1019条)

① その任務を怠ったとき

事例のように、遺言執行者に就任してもその任務を放置して全く手続きを行わなかったり、遺言執行者としての職務違反をした場合が該当します。具体的には、

・遺言執行者が正当な理由なく、相続人に対して相続財産目録の交付を怠った場合
・相続人からの申し出があったにも関わらず、遺言執行状況の報告を怠った場合、等が該当します。

② その他正当な事由があるとき

例えば、特定の相続人の利益を図り、公正な遺言の執行が期待できない場合等が該当します。

③ 遺言執行者の解任の要件を満たさないケース

・遺言が特定の相続人に有利な遺言で、その遺言どおりに遺言を執行しようとした場合
→特定の相続人に有利であったとしても、遺言執行者は遺言どおりの任務を行おうとしただけですので、解任事由には該当しません。

・相続人と遺言執行者との間で、単なる感情的な対立がある場合。
→単に感情的な対立があるだけでは、遺言執行者を解任する事は出来ません。

 

2.遺言執行者解任審判の申立ての手続き

相続が開始された場所を管轄する家庭裁判所に対して、申立てを行います。

申立てを行う事が出来る利害関係人は、相続人、被相続人の債権者、受遺者(遺言により贈与を受けた人)等です。

申立書以外の添付書類は概ね下記のとおりです。

・申立人の戸籍謄本
・遺言執行者の戸籍謄本
・遺言者の戸籍(除籍)謄本
・遺言書の写し、等

なお、遺言執行者解任審判の申立てを行っても、すぐには遺言執行者としての資格を失わせる事は出来ません。

その為、すぐにでも遺言執行者の職務を停止させる必要がある場合には、審判前の保全処分として、遺言執行者の職務執行停止・職務代行者選任の審判の申立てをする事が必要になってきます。

 

3.相続開始前に遺言執行者を解任する事ができるのか?

まれにまだ遺言者がご存命、まだ相続が発生していないケースで、

「自筆証書遺言、公正証書遺言の原案を弁護士等の専門家にお願いして、遺言執行者になってもらった。しかしその弁護士が信頼がおけなくなったので解任したい。」

と言うご相談を承る事があります。

この場合は、遺言執行者を解任する事ができません。

確かに、遺言書の中で遺言執行者として指定はされていますが、実際に相続が開始されておらず、遺言執行者として就任したわけではありません。

就任していない者を解任する事はできませんので、この場合は、遺言執行者の部分について新たな遺言を作成する事で対応する事ができます。

4.まとめ

以上、遺言執行者を解任させる為にはそれなりの理由と手続きが必要となります。

まずは解任出来る要件に当てはまっているのかの検討が必要になります。

個別の事情によっては判断が難しい場合もありますので、遺言執行者の職務態度等でお悩み、お困りの場合は、お気軽に当事務所にお問い合わせ下さい。

状況に応じて、遺言執行者解任審判申立書の作成を行います。

 

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー
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