無理やり書かされた遺言の有効性と再度遺言を書いてもらう時の注意点

こんにちは。横浜のもめない相続の専門家、司法書士/上級心理カウンセラーの甲斐です。

今回の記事は、無理やり書かされた遺言についてご相談されたい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:父が公正証書で遺言を作成した事についてご相談したいと思います。

私には兄弟が3人いるのですが、兄弟間の仲が悪く、その為後々相続でもめないように父に対して遺言を書いてもらうように常々お願いしていました。

父が残したい遺言の内容は、事前に私達兄弟に口頭で伝えられており、私達はそれに納得していました。

そして、兄弟の約束として、父が遺言を作成する時は必ず立ち会う事としていたのですが、それが弟に裏切られました。

弟と父はある司法書士に相談し、司法書士が公正証書遺言の原案を作成、その後弟が父を公証役場に勝手に連れて行き、私達に内緒で父に公正証書遺言を残させたのです。

その事を後日知った私は、父と弟にどのような公正証書遺言を残したのか、その説明を求めました。

父は弟に無理やり説得され、公証役場に連れて行かされたと言い、その遺言の内容は多分、事前に話し合っていた内容であったと思うと回答しました。

弟の方もあくまで兄弟で納得していた内容をそのまま公正証書遺言にしたと言っているのですが、正直私は信用出来ません。

その為、その公正証書遺言の内容を確認したいのですが、父も弟もその公正証書を持っておらず、その内容を確認出来ません。

父が残した公正証書遺言の内容を確認する為にはどうすれば良いのでしょうか?

また、仮にその公正証書遺言が事前の打合せと異なり、弟に有利な内容となっていた場合は、父に再度遺言を書いてもらう事は可能なのでしょうか?

A:遺言が公正証書で作成されている場合は、遺言を作成した公証役場で遺言の謄本を取得する事で、その内容を確認する事は可能です。

また、例え遺言が公正証書で作成されていたとしても、遺言は何度でも新しい遺言を作成する事が可能です。
 
しかし、それには注意点があります。その注意点を踏まえないと、新しく遺言を書いてもらう事は難しいでしょう。

 

1.無理やり書かされた遺言の効力

事例のように遺言者が無理やり説得され、作成された遺言は有効になるのでしょうか?

民法上では、脅されて、つまり強制や強迫、もしくは遺言者を騙し、真意を曲げさせられて書かされた遺言は無効になります。

事例の「無理やり説得され」が上記の無効事由に該当すれば、例え公正証書遺言であっても無効になります。

しかし、現実問題として、民法上の遺言の無効事由を証明するのは非常に困難でしょう(遺言を作成した公証人は、必ず本人の意思確認を行っているはずですので)。

その為、公証役場で公正証書遺言の謄本を確認し、その内容が不適切な物であれば、現実的な対応策として、遺言者に新たな遺言を作成してもらう方法がベストだと思われます。

この点は良くご質問される部分なのですが、遺言を作成した場合、それが確定的に絶対な物になるのではなく、遺言は後から新しい物を作成する事が可能なのです。

後から新しい遺言を作成した場合、その内容が前の遺言と矛盾する範囲で、新しい遺言で前の遺言を撤回したとみなされます(民法第1022条、1023条)。

 

(遺言の撤回)
第1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。

 

また、公正証書遺言を作成した後に自筆証書遺言を作成する事も、その逆も可能です。

 

2.無理やり書かされた遺言への対応策

① 遺言の内容をきちんと確認する

まずは遺言の内容を正確に把握しない限りは、その後の対応を行うべきかと言った判断が出来ません。

その為、まずは遺言者が残した公正証書遺言の内容を確認する必要があります。

確認方法は、公正証書遺言が作成された公証役場に行き、公正証書の謄本を取得する事で確認する事が出来ます。

なお、公正証書遺言の謄本は、遺言者の生前は取得する事が出来る人間は原則遺言者のみです。

その為、公正証書遺言を確認する為には、遺言者本人に行ってもらうか、もしくは遺言者からの委任状(印鑑証明書付き)が必要になってきます。

② 再度遺言を作成してもらう

公正証書遺言の内容を確認し、元々約束していた内容とは異なっていた場合、遺言者に新たな遺言を作成してもらう事が対応方法として考えられます。

その方法は上記でご説明したとおり、自筆証書遺言でも大丈夫ですし、公正証書遺言でも大丈夫です。

 

3.遺言を再度書いてもらう時の注意点

① 遺言者の意志を尊重する事

遺言を作成するのはあくまで遺言者です。その為、遺言者本人が書きたくないのに遺言を作成させる事は出来ません。

また、強迫等を行って無理やり遺言を作成した場合、その相続人は相続人としての地位を失います(民法第891条)。

 

(相続人の欠格事由)
第891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
(一、二号省略)
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

 

また、強迫等を行わなくても、遺言者に対する接し方を間違えた場合、遺言者が気分を害されてもう遺言を残さない可能性も出てきます。

その為、感情的にならず、遺言者に対する対応は慎重に行うようにしましょう。

② 後日の証拠の為にビデオ撮影や録音を行っておく

このような遺言の書き換え合戦は、実際に相続が発生した場合に必ずもめる相続に発展します。

その時に認知症等で意思能力が無かった事や、詐欺・強迫等を理由として、遺言の無効を主張される事もあります。

その場合に備え、遺言の作成の様子をビデオ撮影及び録音した方が良いでしょう。

 

3.まとめ

このように、相続人間の感情的対立から、自分に有利な遺言を書いてもらうように遺言者に働きかけ、紛争状態に突入する事は良くあります。

このような状態になってしまえば、ご自身で解決する事は非常に難しくなりますので、出来るだけ速やかに専門家へご相談を行う事をお勧めします。

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

合格率2~3%台の司法書士試験を、4年間の独学を経て合格。

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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