被相続人が愛人に遺言を残していた場合

こんにちは。横浜のもめない相続の専門家、司法書士/上級心理カウンセラーの甲斐です。

今回の記事は、あまり有ってはほしくない、亡父に実は愛人がいて、愛人宛に遺言を作成していた場合の対処方法の解説です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:先月、父が亡くなりました。

相続人は母と長男である私、そして妹の3人です。

父は若い時に起業し、そのまま何ら挫折する事なく成功してしまったせいか、若い時から女性関係が非常に派手で、幼かった子どもの私が見ても母がかわいそうでした。

父はほとんど家には帰ってこなかったのですが、生活費は十分すぎるくらい家に入れていたので、私たちは特に生活に不自由する事はありませんでした。

それから何十年もたって父は亡くなったのですが、葬儀等全て終わって、父の遺品の整理や遺産の確認をしたところ、預貯金だけで2億円ありました

そんな時、ある日突然派手な服装の女性が自宅に訪ねてきたのです。

女性は父の愛人であり、父の遺言を持っていました。いわゆる、自筆証書遺言というもので、内容は簡単に言いますと「預貯金はこの愛人へ、自宅は家族に」という内容でした。

母は今まで働く事もなく、ずっと家を守ってきたので、父の預貯金が無ければ、今後の生活が成り立たないかも知れません。

また、遺産とは別に父は生命保険に加入しており、その受取人もこの愛人になっていました。

母は父の事について今までずっと我慢していたのに、これでは母があまりにもかわいそうです。

こんな場合でも、遺言が優先されるのでしょうか?

 

1.遺言の効力

被相続人が残した遺産についは、相続人全員で遺産分割協議を行い、その権利の帰属を確定させるのですが、被相続人が遺言を残していた場合、その遺言が優先されます。

なお、遺言によって、相続人ではない者に対して財産をあげる事(遺言による贈与=「遺贈」と言います)が出来ますので、時と場合によっては事例のように愛人に対して遺贈があり、ドラマのように相続の現場が修羅場と化す事もまれにあります。

この状況、ご家族としてみれば、突然見知らぬ愛人が登場してきて、しかも遺言で遺産を持っていくと言う腹立たしい事態だと思われますので、ご家族の為に考えられる対応策を検討してみたいと思います。

 

2.対応方法

① 遺留分減殺請求

「遺留分」とは、各相続人に留保された、最低限度の相続分です。

兄弟姉妹以外の相続人が遺留分を持っており、その割合は、

・父母等、被相続人の先代の人のみが相続人である場合  法定相続分の3分の1
・それ以外の場合                   法定相続分の2分の1
となります。

相続人が配偶者と子どもが2人いるケースで具体的に計算してみます。相続財産が2億5,000万円とします。この場合の各相続人の遺留分は

配偶者:2億5,000万円×2分の1(法定相続分)×2分の1(遺留分の割合)=6,250万円
各子供:2億5,000万円×4分の1(法定相続分)×2分の1(遺留分の割合)=3,125万円
となります。

これでも不十分かもしれませんが、上記の遺留分が遺言で侵害されているようであれば、遺留分減殺請求を行い、侵害された遺留分を取り戻す事が出来ます。

なお、遺留分減殺請求権は裁判上で行う必要はありません。

② 遺言の効力そのものを争う

上記の遺留分減殺請求だけでは納得出来ない場合、遺言の効力そのものを争う事も検討しても良いかもしれません。

事例の遺言は自筆証書遺言であり、自筆証書遺言は法定の要件を満たさないと無効になります(民法第968条)。

まずは遺言の形式に不備が無いか確認し(自筆証書遺言の場合、結構不備が多いです)争うか否か判断すべきでしょう。

また、遺言の作成当時、遺言者が認知症等であった場合は、その当時意思能力を欠いており、そのため遺言は無効であると言う主張も出来ます。

ただし、この場合は証拠が必要であり、その証拠をいかにして集めるかがポイントになります。

③ 公序良俗違反で争う

そもそも、不倫相手である愛人に対しての遺贈が有効なのか?という問題があります。

愛人との不倫関係を維持するための愛人契約は、公序良俗(一般秩序または社会の一般的道徳観念)に反して無効となります(民法第90条)。

その為、愛人に対する遺贈も無効なのでは?と言う問題があります。

実はこの点は判例があります。愛人に対する遺贈が有効になった判例として、

⑴ 不倫関係の維持継続を目的とせず、
⑵ もっぱら生計を遺言者に頼っていた愛人の生活を維持するための遺贈であり、かつ、
⑶ 遺言の内容が相続人(妻や子)の生活の基盤を脅かすものではない場合には、公序良俗に違反せず、有効となるとされています(最高裁昭和61年11月20日判決)。

なお、遺贈が無効になった判例として、「遺言の内容が妻の生活の基盤を脅かすなどの事情があるときには、当該遺贈は公序良俗に違反して無効になる」と判断されたものがあります(東京地裁昭和63年11月14日判決)。

「妻の生活の基盤を脅かす事情」と言うのがポイントになり、事例のケースであればこのポイントを丁寧に主張・立証する事で、裁判所に遺贈の無効を認めてもらえる可能性があります。

 

3.まとめ

被相続人の愛人が出てくる、というケースはほぼ100%の確率でもめる事になり、遺産分割調停等の裁判所の手続きを利用する必然性が高くなります。

また、愛人に対して直接対応するのも非常にストレスになると思いますので、極力弁護士を代理人にたてる事をお勧めします。

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

合格率2~3%台の司法書士試験を、4年間の独学を経て合格。

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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