
こんにちは。司法書士の甲斐です。
今回の記事は、相続人の中に行方不明者がいて、遺産分割協議が出来ずにお困りの方向けの記事です。
(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)
【事例】
Q.私の父が先月亡くなりました。相続人は私を含めた兄弟三人なのですが、一番下の弟である三男が問題になっています。
三男は父と折り合いが悪く、数十年前に家出をしたきり帰ってきません。
時々送られてくるハガキの消印から、九州のとある県にいる事は分かっているのですが、詳細な住所や電話番号等の連絡先は一切分からない状態です。
父の遺産は不動産や預貯金等があり、このままですと相続手続きが出来ない為、非常に困っていまいます。こういった場合、どうすれば良いのでしょうか?
A.家庭裁判所に対して不在者財産管理人選任の申立てを行い、選任された不在者財産管理人と遺産分割協議を行う事で、相続手続きを進める事が可能です。
1.不在者財産管理人とは?
不在者財産管理人とは、
・従来の住所、居所を去って、簡単には帰ってくる見込みがない不在者がいて、
・不在者がその財産を管理する事が出来ない場合に、
家庭裁判所が申立てにより選任する不在者の財産の管理人です。
長期の家出人が不在者にあたり、生死不明である事は必要ではありません。
不在者財産管理人の権限は、文字通り不在者の財産の管理を行う事です。具体的には、
・利用行為(財産からの収益を図る行為。利息付きの金銭の貸付等。財産の性質を変えない範囲でのみする事が出来る。)
・改良行為(財産の価値を増加させる行為)
に限定され、上記以外の行為を行う場合、家庭裁判所の許可が必要となります。
2.不在者財産管理人選任申立ての流れ
① 申立人
申立てが出来るのは、利害関係人及び検察官に限られています。
利害関係人とは、不在者の財産管理について法律上の利害関係のある人の事です。
例えば、不在者と共に相続人になっている人、不在者の債権者等です。
管轄は、不在者の方の従来の住所地・居所地を管轄する家庭裁判所です。
② 申立てに必要な書類
・申立書(裁判所のホームページからダウンロードできます)
・不在者の戸籍謄本、戸籍の附票
・財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票
・不在の事実を証する資料(警察署長の発行する家出人届出受理証明書、不在者宛の郵便物で『あて所に尋ね当たらず』等の理由で返送された郵便物)
・不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書,預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
・利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),賃貸借契約書写し,金銭消費貸借契約書写し等)
その他、家庭裁判所から指示された書類を用意します。
※予納金として数10万~100万円程の納付を家庭裁判所より求められる事があります。
※不在者財産管理人の推薦を行うことはできますが、選任するのはあくまで家庭裁判所であるため、希望が通るとは限りません。
③ 不在者財産管理人の資格
資格は特に必要ありません。
実務上は弁護士・司法書士等の専門家や、身内の方がなる事もあります。
3.不在者財産管理人就任後の流れ
家庭裁判所より選任された不在財産管理人が就任した場合、不在者の財産の調査を行い、財産管理の方針を決定します。
その中で事例のように不在者の法定代理人として、遺産分割協議に参加する事があります。
4.まとめ
不在者財産管理人の選任申立書の作成に関して、色々な注意点やポイントがあるのですが、一番の難所は、不在者の戸籍および戸籍の附票の取得です。
親族間であっても、不在者が直系血族間でなければ戸籍を取得する事は原則出来ませんので、不在者財産管理人の選任申立が不可能になってしまう場合があります。
司法書士は不在者財産管理人選任申立書等の裁判所へ提出する書類の作成を行う事ができ、さらに申立てに必要な戸籍等の書類の取得も職務上の権限として行うことができます。
司法書士にご依頼頂ければ、皆様の時間を不慣れな手続きに費やす必要が無くなります。
相続人の中に不在者がいてお困りの場合は、お気軽に当事務所にご相談下さい。