法定相続分による不動産の相続で気をつける事

不動産登記

こんにちは。

今回の記事は、様々な事情から法定相続分で不動産を共有相続する方に対して、注意して頂きたい事を記載した記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:先日母が亡くなり、母名義のマンションについて弁護士さんのアドバイスのもと、母の相続人である私を含む兄弟3人で話し合い、取り敢えず法定相続分による共有の名義変更を行いました。

(登記の手続きは弁護士さんに行ってもらいました。)

それから数ヶ月後、そのマンションを売却したいと思い、不動産会社から紹介された司法書士の方に必要な書類の説明を受けたのですが、問題が発生しました。

その司法書士の方いわく、不動産の権利書が私の分しかなく他の2人の権利証が無いため、本人確認情報と言う物を作成しなくてはいけない、それには別途費用が発生すると説明を受けました。

弁護士さんは間違いなく不動産の名義変更を行ってくれたはずで、私の権利証しか無いと言うのは納得いきません。この司法書士は嘘をついているのでしょうか?

A:恐らく、弁護士に不動産登記を依頼した時に相談者の方しか委任状を書いておらず、その為に相談者の方にしか権利証が発行されていないものと推測できます。

1.不動産の権利証(登記識別情報)とは?

相続や遺産争いをテーマにしたドラマ等で、不動産の権利を証明する、「不動産権利証」と書かれた冊子状の書面が出てくる事があります。

これが不動産の「権利証」と呼ばれているものです。正式名称は「登記済証」と呼ばれるものなのですが、実は不動産登記法が改正され、登記済証の制度は廃止になりました。

登記済証の代わりに、12桁の英数字で構成された「登記識別情報」と言う情報が通知されるようになったのですが、この「情報」がその不動産の権利者である事を証明するものになります。

なお、登記済証や登記識別情報の詳細な説明はこちらをご覧下さい。

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2.登記識別情報が通知される条件

登記識別情報は、申請人自らが登記名義人となる場合に、その登記が完了した時に通知されます。

「申請人」とはその名のとおり、不動産登記の申請人であり、申請人として登記申請書に記名押印した者を指します。

登記識別情報は不動産ごと、申請人ごとに通知され、申請人が複数いる場合は全員に通知されます。

(なお、弁護士や司法書士に登記手続きを依頼した場合、その弁護士、司法書士に委任状を提出した人が申請人となります。)

登記の申請は、申請人全員で行う事が大原則です。

しかし、中には申請人となる人物の1人から、登記申請が出来る手続きが存在します。

その中の一つが実は、事例でご紹介した「法定相続分による相続登記」です。

もともと遺産に関しては、遺産分割協議を行わない限り、法定相続分での共有状態となります。マンションの様な不動産も例外ではありません。

その為、法定相続分による相続登記は、申請人の1人からの手続きを認めたとしても、他の相続人に何ら不利益を生じないため、例外的な手続きとして肯定されているのです。

つまり事例の場合、相談者の方しか弁護士に委任状を提出していない為、申請人は相談者のみとなり、登記識別情報も相談者にしか通知されなかった、と言うわけです。

なお、事例のような出来事は実際に良くある話で、私にも経験があります。

その時に弁護士に事情を聴取すると、「別に法律に違反しているわけではないのに、何がいけないの?」と開き直られる事があります。

確かに、法律上は何ら問題無いのですが、その結果として相続人に不利益が生じている事は事実であり、法律家として一応は注意すべきだったのでは、と思います。

3.売却時に登記識別情報が無い場合

売買による所有権移転登記を行う場合、登記所に対して、登記義務者(売主)の登記識別情報の提供を行う必要があります。

共有の不動産を売却する場合、共有者全員の登記識別情報が必要となります。

もし、登記識別情報がそもそも通知されていない場合等は、事前通知制度や資格者代理人による本人確認情報の提供等の手続きを行う必要があります。

詳細は上記の「権利証を紛失してしまったら?」をご参照下さい。

4.まとめ

登記識別情報が通知されていなかったとしても、結局は売買による所有権移転登記はできるのですが、その分、司法書士に支払う報酬は増えます。

その為、無駄な費用を抑えるためにも、共有で不動産を相続する場合、全員が申請人となるか、全員が司法書士に委任状を提出する事を忘れないようにして下さい。

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