
こんにちは。司法書士の甲斐です。
私は相続の様々な事について日々ご相談を受けているのですが、その中で、「もめない相続とする為には一体何がポイントとなってくるのか?」と言う点を仕事柄、日々考えています。
一口に相続の問題と言ってもそれは100人いれば100通りの問題があり、それぞれ全て異なっています。
その為、画一的な解決方法は無いのですが、それでも共通したポイントはあります。
それは、「相続の法律」「相続税」「相続人間の感情」そして「気軽に相談出来る専門家」です。
この4つが揃って初めて、本当の意味でのもめない相続を実現する事が可能となってくるのです。
1.相続の法律について
相続の法律と言えば民法です。民法では相続について様々な事が規定されています。
遺言が有効に成立する為の条件から、相続人の条件とその相続分、相続分を増減させる制度(寄与分、特別受益)等、細かく規定されています。
そもそも相続人が誰なのか、各相続分がどうなっているのかが正確に理解出来ていないと、相続の話し合いを行う事は出来ません。
ほとんどの方は民法は見た事は無いと思うのですが、相続手続きを行う上で絶対に避けては通れない法律なのです。
相続の話し合い(遺産分割協議)は、まずは法律上問題がないように行う必要があります。
2.相続税について
相続の話し合いが法律的に問題がないとしても、さらに考える必要がある事が存在します。
それは、相続税の事です。
日本の法律では、相続税が減税される様々な制度があります。
その事を考慮せずに遺産分割協議を行いますと、本来支払わなくても良い相続税を納税する事にもなり、その金額は場合によっては数百万円になる事もあります。
その為、相続の話し合い、遺産の分け方については、相続税についても十分に考慮する必要があります。
なお、個別具体的な相続税のご相談は税理士の独占分野ですので、実際に相続税がいくらかかるのか、減税処置を行った場合、具体的にどれくらい減税されるかは税理士にご相談する必要があります。
3.相続人間の感情について
法律的にも相続税的にも正しくても、それでもトラブルに発展する事があります。それが「相続人間の感情の問題」です。
相続の話し合いの中で、「あなたの法律上の相続分はこれだけだから、いいよね?」と言われても、それについて納得しない相続人も出てきます。
例えば親の介護をしていた相続人や、介護まではいかなくても、親の面倒を看ていた相続人がいた場合。
また、相続人が子供の場合で、被相続人が生前、特別受益に該当しない範囲で子供達に金銭的に不公平な対応を行っていた場合等。
いくら「法律では正しい」と言ってもその相続人は納得しないでしょう。
この感情の問題をどのようにするのかもきちんと考える必要があります。
4.気軽に相談出来る相続の専門家について
相続の問題が発生すると、どこからか自称「法律に詳しい人」が出てくる場合があります。

弁護士や司法書士にお願いすれば費用がかかるし、それは馬鹿らしいでしょ?だったら私が色々としてあげるわ。私、法律に詳しいの。
と色々とお節介を焼いてきます。
ただ、当事者である相続人は「法律に詳しい人からタダでやってもらえてラッキー」と思ってしまうかもしれませんが、自称法律に詳しい人の知識は、往々にして間違っています。
自称法律に詳しい人は、相続に関する書籍は何冊か読んだから大丈夫!と思っているケースがあるのですが、法律は改正される事が多く、また各ご家庭のご事情によって考えるべき事、判断すべき事は異なります。
その為、相続に関する書籍を数冊読んだだけでは、とても実務に対応できませんし、そればかりか法律上間違った事を行ってしまい、取り返しのつかない損害を被る事もあります。
相続に関する相談や依頼は相続の専門家に行うようにして、お金をかけるべき部分はきちんとお金をかけるようにして下さい。
5.まとめ
このように、「相続の法律」「相続税」「相続人間の感情」そして「気軽に相談出来る専門家」の4つがセットになって初めて、本当の意味でもめない相続を実現する事が出来ます。
「たかが相続でそこまで考える必要があるの?何だかめんどくさい。」と思われるかも知れませんね。
しかし、私は何もしない親のために、相続で泣いた子供を沢山見てきました。
相続は後々トラブルになる事の方が遥かに大変な事ですし、場合によっては相続人の人生を破壊する事にも繋がりかねないのです。
知らない事、無知である事ほど怖い事はありません。
後々に相続トラブルを引き起こさない、ストレスにさらされない日常を送る為にもこの4つの事はしっかりと考えておきましょう。