
こんにちは。司法書士の甲斐です。
今回は、先日成立しました法律で、自筆証書遺言を法務局で保管をする事が出来る制度についてお話ししたいと思います。
遺言は大きく分けて、
・公正証書遺言
の2つがありますが、専門家が遺言の相談を受けた場合、基本的には公正証書遺言をお勧めする事が多いと思います。
自筆証書遺言は手軽に作成する事が出来るメリットがありますが、様々なデメリットがあるのがその理由です。
きちんと法律の要件にそった遺言を作成しないければ無効になりますし、保管場所の問題もあります。
この自筆証書遺言の保管場所、結構やっかいな問題でして、作成した遺言者本人がどこに保管したか忘れてしまう事があります。
また、遺言者の生前中、他の家族に遺言が見つかり、遺言が隠されてしまう事もあるのです。
このような、自筆証書遺言の保管に関するデメリットを回避する為の法律、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が平成30年7月6日に成立しました。
1.遺言書保管法とは?
遺言書保管法(法務局における遺言書の保管等に関する法律)は、ますます進む事になる超高齢化の社会において、相続を原因とする紛争を未然に防止するという観点から、法務局において自筆証書遺言を保管する制度を新たに設けるものです。
※実際の施行日は、令和2年7月です。
施行前には法務局に対して、遺言書の保管を申請することは出来ませんのでご注意下さい。
2.遺言書保管法の概要
① 遺言書の保管の申請について
保管の対象になるのは自筆証書遺言です。
さらにその自筆証書遺言は封のされていない状態である事が必要になってきます。
(封筒に入れて封をした場合、保管申請は出来ません。)
② どこの法務局に対して遺言書の保管の申請を行うか?
まず、遺言書の保管に関しては、法務局のうち法務大臣の指定する法務局(これを「遺言書保管所」と言います。)において、遺言書保管官として指定された法務事務官が取り扱います。
そして遺言書の保管の申請は、
・遺言者の住所地
・遺言者の本籍地
・遺言者が所有する不動産の所在地
のいずれかを管轄する遺言書保管所の遺言書保管官に対してすることができます。
条文を見る限り、全ての法務局で遺言書の保管が出来るわけではなさそうですので、この点も注意が必要です。
③ 遺言書の保管の申請方法
遺言書の保管の申請は、遺言者が遺言書保管所に指定された法務局に、自ら行って行う必要があります。
その際、遺言書保管官は、申請人が本人であるかどうかの確認をします。
→詳細はまだ不明ですが、絶対に法務局に行かなければダメなようです。
さらに、あくまで遺言者本人が申請を行う必要があり、代理人による申請も認められていないようです。
④ 遺言書の保管方法
遺言書保管所である法務局は、遺言書の保管の申請がされた場合、遺言の原本をその法務局で保管する事になります。
その他、次の事項をデータとして記録する事になります。
・遺言書の作成の年月日
・遺言者の氏名、生年月日、住所及び本籍地
・受遺者がある場合、受遺者
・遺言執行者が指定されている場合、遺言執行者
・遺言書の保管を開始した年月日
・遺言書が保管されている遺言保管所の名称と保管番号
なお、相続人等は遺言者が亡くなった場合、上記の情報を記載した「遺言書情報証明書」の交付を請求する事が出来ます。
⑤ 遺言者による遺言書の閲覧、保管の申請の撤回
⑥ 遺言書の保管の有無の照会
誰でも、遺言書保管所たる法務局の遺言書保管官に対して、遺言書が保管されているか、遺言書が保管されている場合、遺言者の氏名と遺言書保管所の名称と保管番号が記載された「遺言書保管事実証明書」の交付を請求する事が出来ます。
いわゆる公正証書の遺言検索システムと同様の趣旨のものですが、大きく異なる部分は「誰でも」遺言の検索や証明書の発行を請求する事が出来る点です(遺言書保管法第10条)。
この部分は今後、実務上でどのような運用がなされるか注意が必要だと思います。
⑦ 遺言書情報証明書の交付
⑧ その他
3.まとめ
遺言書保管法はまだ成立したばかりの新しい法律で、実際の施行はまだ先になり、細かい規則はこれから定められていく事になります。
今後、遺言を作成する場合、法務局で遺言を保管する事が出来る事も踏まえて、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選択するのかを考える必要があるでしょう。
なお、法務局における自筆証書遺言の保管について、注意点があります。
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