
こんにちは。司法書士の甲斐です。
相続に関するトラブルが発生した場合、そのトラブルを解決する為に莫大な時間がかかる場合があります。
その為、

嫁や子供から親の相続の事を何とかしてと言われているけど、もう面倒だから放置しちゃおう。きっと何とかなるさ♪
と目の前の問題から逃げて、(どうにもならないのですが)楽観的に考え問題を放置している人がいるのが現状です。
場合によっては問題を放置する事も一つの方法なのですが、その結果配偶者から離婚を迫られたケースを今回はご紹介したいと思います。
(今回ご紹介する事例は、よくあるお話しを元に作成した架空のお話しです。)
1.事例紹介
太郎さん(52歳)には奥さんの花子さんと大学生の一郎さん、高校生の二郎さんの家族がいます。
太郎さんの父親が数ヶ月前になくなり、相続人は太郎さんと太郎さんの兄です。
相続人はたった二人だけですので相続について特に何ももめる事はないと思っていたのですが、いつまで経っても相続手続きが終わりません。
その理由は、太郎さんの兄です。
太郎さんの兄は父親とは反りが合わず、また父親の事を憎んでおり何十年も父親と会っておらず、父親の葬儀にも出ませんでした。
その後、太郎さんとの連絡も一切断っており、印鑑証明書等、相続手続きに必要な書類も当然に出してくれません。
太郎さんは
「兄は父親との関係性が悪かったから仕方がない、時間が経てば気持ちも落ち着いて相続手続きに協力してくれるはずだ。」
と思い、それから何年も経過したのですが、状況は全く進展しませんでした。

遺産分割調停をした方が良いんじゃないの?
と言う花子さんの忠告も「まぁ、何とかなるでしょ」と太郎さんは楽観的にとらえ、問題は何一つ解決しない状況でした。
2.離婚に至った経緯
実は太郎さんは昔から面倒な事を後回しにする、だらしない性格でした。
花子さんが生活費の事や子育ての事について悩みを打ち明けても、
「まぁ、何とかなるんじゃない?」
と真剣に聞いてくれません。
子供達も太郎さんの姿を見て情けないと思い、花子さんに影で
「離婚すれば良いのに。」と言っていたのです。
そのような負の感情が何年も何十年も積もり積もって、事例のような相続問題が発生しました。
もし太郎さんがこの相続問題を解決しないまま亡くなった場合、困るのは花子さんや子供達です。
「相続の問題をきちんと解決してほしい」
花子さんは太郎さんに何度も訴えてきましたが、太郎さんはいつもの「何とかなるだろう」と考えて、花子さん達の訴えについてやはり真剣に聞く事はありませんでした。
花子さん達の今まで散々積もりに積もってきた太郎さんへの負の感情が、この相続問題が発生し、さらに加速したのです。
その結果、花子さんとその子供達はある密約をしました。
「子供達が全員大学を卒業し就職したら、花子さんは太郎さんと離婚する。」
数年後、その密約通り花子さんは太郎さんに離婚を迫ってきました。
太郎さんは花子さんがまさか離婚を言い出す事はないと思っていたのですが、花子さんは離婚をしても困らないように、離婚後の生活費等、今後の事について計画的に進行させていたのです。
3.まとめ
実家の相続の事については、自分の配偶者や子供は原則的に部外者になります。
しかし、部外者と言っても家族は相続の問題について間接的に影響を受けますし、問題を解決しないリスクを過小評価する事で、事例のように相続以外の問題も発生する可能性があるのです。
「何とかなるだろう。」
確かに偶然何とかなる事もあります。
しかし、ほとんどの場合は主体的に何とか「する」必要があるのです。
目の前のリスクから目をそらすのは簡単ですが、そのリスクが大きくなってしまったら回復不可能な損害が生じる事がある事もご理解下さい。