相続手続きを他の司法書士に依頼したい(変えたい)場合に考えるべき事

相続一般

こんにちは。司法書士の甲斐です。

相続手続きを司法書士にご依頼された場合、基本的にはその司法書士が責任を持って仕事を行います。

しかし、物凄く雑な仕事を行い、適当な知識を語って他の相続人を怒らせる司法書士がいます。

また、仕事以外の面で、例えばどうしても人として反りが合わず、「このまま先生に仕事をお願いしても良いのだろうか?」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

「出来る事であれば司法書士を変えたい。でも、もう契約してしまったし、果たしてそんな事が出来るのだろうか・・・?」

今回の記事は、相続手続きを司法書士にご依頼されているけれど、その司法書士を変えたい方向けの記事です。

1.民法の大原則

まずは、法律上、既に締結した契約を解除する事が出来るか?と言った大原則のお話です。

相続手続きを司法書士に依頼する場合、通常「委任契約」を締結するはずです。この「委任」は民法に規定があります。

(委任)
第六四三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
(準委任)
第六五六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
このように、「委任」とは本来は法律行為を行う事を委託する事を指します。しかし、相続手続きの中には法律行為も、それ以外の事務的な行為もあります。その為、民法では法律以外の事務的な事も「準委任」として規定して、準委任も委任に関する規定が適用されるようになっています。

恐らく、司法書士と委任契約を締結する際は、その内容は民法上の委任と準委任が混在した内容となっているはずです。

それでは、民法に規定されている委任の解除に関する規定を見てみましょう。

(委任の解除)
第六五一条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
実は委任契約は、民法上いつでも解除をする事が出来るのです!
皆さん、これは意外だったのではないでしょうか?規定上は損害賠償を行う場合があるかもしれませんが、委任契約はいつでも解除する事が出来るのが大原則です。

では、これを踏まえた上で、相続手続きを依頼している司法書士との契約を解除する為の具体的な方法をお話していきたいと思います。

2.相続手続きを依頼している司法書士を変えたい場合

① 委任契約書の解除に関する項目を確認しましょう

まずは委任契約書の解除に関する項目を確認しましょう。民法上は当事者はいつでも契約を解除する事が出来るのが大原則ですが、委任契約の内容によっては何らかの制限をかけている可能性があります。

その為、まずは委任契約の解除に関する項目を確認し、どのような状況であれば委任契約を解除出来るのかを確認して下さい。

なお、契約解除に関して制限を設ける事自体は有効なのですが、ごくまれに悪徳な司法書士が、例えば「委任者はどのような状況でも本委任契約を解除する事が出来ない」等と言った条項を設けている事があります。

このような依頼者の契約解除権を一方的に奪う条項は、消費者契約法第8条の2や10条を根拠として無効になります。

※委任契約書を作成していなかった場合

相続手続きのように、仕事が完成するまである程度の期間が要する事を司法書士に依頼する場合、司法書士側で委任契約書を作成する事が一般的です。

しかし、委任契約書を作成するのを面倒がって、全て口頭で説明している司法書士が一定数存在しているようです。

委任契約書が無ければ解除に関する規定も不明ですので、その場合は直接その司法書士に解除したい旨を伝えるしかありません。

なお、委任契約は法律上口頭でも成立しますが、プロとして通常は委任契約書を作成するはずです。

その為、委任契約書を作成しない司法書士はそもそも信頼に値しないと言えるでしょう。

② 既に支払ったお金(前金、着手金)の処理を確認しましょう

契約解除の条件を確認したら、お金の取扱いもきちんと確認しましょう。

つまり、着手金や前金である程度の報酬を支払っている場合、それを返金してもらえるか?と言う点です。また、司法書士がある程度仕事を行っている場合、その報酬の支払いをどうするのかと言う点も確認が必要です。

基本的にこの点に関しては、契約書で定めていた場合はその契約書通りの処理が行われるでしょう。

もし、契約書に契約解除後の返金に関する規定等がない場合、民法の規定や当事者間の協議で返金する事やその額を決める必要があります。

その他、お金に関する事として、損害賠償等が必要なのかも確認しましょう。

③ 契約解除の意思表示をしましょう

以上、契約解除の条件や返金等に関する事を確認したら、契約解除の意思表示を行うのを忘れないようにしましょう。

契約解除の意思表示は口頭でも有効ですが、後々のトラブルを防ぐためにも、書面で行うようにしましょう。

なお、その司法書士が信用出来ないようであれば、配達証明付きの内容証明郵便にて契約解除の意思表示を行うのがお勧めです。

3.まとめ

難しい試験に合格した、国家資格の司法書士と言えども人間です。

(あってはならないですが)仕事の質が悪かったり、どうしても性格が合わなかったりする事はあります。

その時にお互い嫌な気持ちのまま仕事を行うよりも、スッキリと委任契約を解除した方が良い場合もあります。

一生に一度あるかないかの大切な相続手続きです。司法書士は一人でありません。あなたの周りには司法書士は実は沢山いますので、きちんと信頼のおける司法書士に相続手続きを依頼するようにして下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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町田・横浜FP司法書士事務所
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