相続でも難易度が高い、限定承認を分かりやすく解説します

こんにちは。横浜の揉めない相続の専門家、司法書士/上級心理カウンセラーの甲斐です。

今回の記事は、限定承認についてご相談、ご依頼されたい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:先日、私の父が亡くなりました。

父は不動産を複数所有しており、また預貯金等の金融資産もあるのですが、個人事業を行っていた関係上、借金もあります。

ただ、この借金が現状どれくらいあるのかが私達相続人では分からず困っています。

そんな時に「相続財産から借金等を支払えば、別途自分の財産で父の借金を支払わなくても良いと言う相続手続きがあると言う事を聞きました。

この手続きの事について是非教えて下さい。

 

1.限定承認とは?

限定承認とは、被相続人の財産から相続債務の支払いを行い、その結果相続債務が残ったとしても以後の支払いの責任を免れる相続の方法です。

事例のようにプラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いのかが分からない状況の時に有効な相続手続きです。

これだけを聞くと、非常に素晴らしい制度のように聞こえますが、ところが実際には、家庭裁判所で申述される限定承認の件数は年間700~800件程です。

相続放棄の件数は年間17万件程ですので、限定承認の利用数がいかに低いかがお分かりになると思います。

件数が低い理由は色々と考えられるのですが、債権者に対する相続財産の配当の手続きが煩雑である事と、相続開始後三ヶ月以内に、相続人全員で行う必要がある事が挙げられます。

 

2.限定承認の流れ

① 限定承認の申述

管轄の家庭裁判所(被相続人の最後の住所地の家庭裁判所)に対して申立書及び必要書類を添付して行います。

【必要書類】
・申立書及び財産目録(裁判所のホームページよりダウンロード出来ます)
・被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本
・被相続人の住民票又は戸籍の附票
・申述人全員の戸籍謄本
・被相続人の子で死亡している方がいる場合、その子の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

(申述人が被相続人の父母等の第二順位の相続人の場合)
・被相続人より上の世代で死亡している方(相続人と同じ代及び下の代に限ります)がいらっしゃる場合は、その方の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

(申述人が被相続人の兄弟姉妹等の第三順位の相続人の場合)
・被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の上の世代の方の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・代襲者としてのおいめいで死亡している方がいる場合,そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

その他、申述人が第二、第三順位の相続人の場合審理の関係上、家庭裁判所より追加で提出を求められる書類があります。

② 家庭裁判所による申述の受理

限定承認の申述申立書を管轄の家庭裁判所に提出すると、照会書(申述者の限定承認が真意に基づくものなのかを確認する為の書面)が送付されてくる場合があります。

照会書に回答(返送)すると、家庭裁判所が限定承認を申述するか否かの判断を行い、受理する場合は申述受理の審判がなされます(ご自宅に通知書が送付されます)。

③ 相続財産管理人の審判

限定承認申述受理後、相続人が複数いる場合であればその中の一名が家庭裁判所から相続財産管理人に選任され、その相続財産管理人がその後の手続きを行う事になります。

相続人が一名しかいない場合、相続財産管理人の選任審判はされず、限定承認者がその後の手続きを行う事になります。

④ 請求申出の公告・催告

限定承認の申述が受理されたら、5日以内(相続財産管理人が選任されたら10日以内)に「限定承認をした事及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨」を官報に公告します。

なお、この時点で既に知っている債権者がいる場合には、官報公告だけではなく、別途、請求申出を催告する必要があります。

(注意点)
官報公告の期間は二ヶ月以上である必要があり、この期間内は相続債権者に対して支払いを行う事が出来ません。

⑤ 相続財産の管理・換価

不動産のようにそのままでは相続債権者に対して支払いが出来ない相続財産については、売却を行い金銭に換価する必要があります。

なお、民法上は換価は競売によるものとされていますが、事実上、相続債権者全員の同意を得て任意による売却を行っている事もあります。

ただし、限定承認における手続違背には変わりはありませんので、債権者に損害が発生した場合はその損害を賠償する責任が生じます。

その為、任意での売却をお考えの場合は、必ず専門家にご相談下さい。

⑥ 相続債権者への支払い

官報公告期間が満了したら、請求申出をしてきた相続債権者に対して支払いをしていきます。

なお相続財産をもって全ての相続債権者に対して全額の支払いが出来ない場合は、それぞれの債権額の割合に応じて按分して支払いを行うのですが、この手続きが非常に煩雑かつ法的知識が必要となる為、限定承認を行う事が敬遠されている理由の一つだと思われます。

⑦ 準確定申告

限定承認を選択した場合、相続開始時に時価で被相続人から相続人に対して資産の譲渡がなされたものとして、課税対象になります(みなし資産譲渡所得課税制度)。

その為、相続の開始があった事を知った日の翌日から四ヶ月以内に準確定申告を行う必要があります。

⑧ 残余財産の処理

請求申出をしてきた全ての相続債権者に対して支払いをしてもなお相続財産が残った場合は、限定承認者がそれを取得します。

なお、限定承認者または相続債権者が知らなかった相続債権者から請求を受けた場合は、残余財産から支払いを行います。

⑨ 相続税の納付

相続税の基礎控除額を超えて、相続税の納付が必要になった場合は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告を行います。

 

3.まとめ

プラスの財産からだけ借金等を支払えば良い、相続人にとっては非常に都合の良い制度なのですが、その手続きは相続放棄と比べてかなり煩雑になっています。

しかし、その煩雑な手続きをきちんと行えば、場合によっては借金を全て返済して、かつ相続財産も取得する事が出来る制度ですので、相続の方法の一つとしてご検討してみても良いと思います。

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー

 

心理カウンセリングの技術を応用して、もめない相続の実現を目指す専門家。

不動産や銀行預金等の相続手続きの他、心理カウンセラーが行う心理療法であり心理学のひとつ、「交流分析」をベースにして、法律と感情面の双方から、相続人間のコミュニケーションが円滑になる為の多角的なサポートを行っている。

元俳優。アクションが得意でTVドラマ出演やヒーローショーの経験もあり。

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