「絶対に相続でもめるわけがない」と思っていた普通の家庭が相続でもめる理由

相続トラブル事例

こんにちは。司法書士の甲斐です。

「相続はもめると言う事を良く聞くのですが、ウチは普通の家庭だし、相続でもめる事なんて想像出来ないんですよね」と言うお話をお伺いする事があります。

その一方で、「ウチは相続でもめる事はないと思っていたのですが、実際に親が亡くなったら大変な事になって・・・」と当事務所にご相談される方もいらっしゃいます。

この違いは一体何なのでしょうか?一言で言えば、「普通の家庭では、将来の相続トラブルを具体的にイメージ出来ない」と言う事が理由だと思います。

確かに、TVドラマやニュース等で話題になるのは資産家の相続トラブルであったり、元々家族の中に確執があった相続トラブルです。

しかし、TV等は視聴率を稼がなくてはいけない為、面白み、話題性があるものしか取り扱いません。普通の家庭の、普通の相続を取り上げてみても、何も面白くないのです。

ところが実際に相続トラブルに発展するのはこの「普通の家庭」が圧倒的に多いのです。その為、今回はこの「普通の家庭」にスポットを当てて、普通の家庭が陥りやすい相続トラブルの具体例をお話したいと思います。

1.不動産の相続方法を巡ってもめる

相続財産(遺産)の代表的なものが不動産、つまり「自宅」です。日本は国策により、自宅を所有している人が多く(総務省統計局のデータによりますと、普通世帯5013万世帯のうち住宅を所有している割合は約50%です)、相続のご相談でも不動産の問題が良く挙がってきます。

実はこの不動産については、相続の場面でもめる事が多い相続財産の代表格なのです(もめないケースでも、その相続方法を巡って相続人が苦労する事が良くあります)。以下、その「もめる」理由をお話していきます。

① 不動産はそもそも分けにくい

相続財産の分け方(遺産分割協議)は、まずは法定相続分に従っておこない、後は寄与分や特別受益、その他、各ご家庭のご事情を考慮した方法を取るのが多いと思います。

現金や銀行預金であれば分けやすいので特に問題はありませんが、不動産は分けにくい財産の為、場合によっては不公平になる事があります。

具体例を挙げてみましょう。

亡くなられた太郎さんの相続財産には自宅(家屋・土地:評価額4,000万円)と銀行預金(2,000万円)があったとします。

太郎さんの相続人は子供達A、B、Cの3人だった場合、各相続人の持分は3分の1ですので、計算上、子供達は 2,000万円分を相続出来る事になります。

しかし、不動産はそのままでは分割出来ません。その為、例えばAが単独で相続した場合、Aが4,000万円を相続した事になり、B、Cとの相続分を比較すると、非常に不公平な結果になります。

相続人全員でこのような分け方に合意していれば良いのですが、どこかで知恵を付けた相続人が「その分け方は不公平だ!」と言ってしまえば、解決するのに非常に時間がかかるでしょう。

② 不動産は売れない可能性がある

ちなみに、上記の事例で「自宅を売却して、その売却代金を相続人で分ける」と言う遺産分割の方法があります(これを「換価分割」と言います)。

この方法であれば相続財産が分けやすいお金になりますので問題が無いように思えますが、注意点があります。

注意点の一つ目は、「売却する事に対して全員が合意しなくてはいけない」と言う点です。

遺産分割を行うまでは相続財産は相続人の共有状態となります。その為、自宅を売却する場合には、相続人全員が売却に対して合意する必要があり、一人でも反対していると、売却する事が出来ません。

「思い出が一杯つまった家だから、絶対に売りたくない」と思う相続人がいた場合、自宅を売却する事が困難になります。

二つ目の注意点として、「買い手が見つかるとは限らない」と言う点です。

日本の人口は今後減少する事が明確になっています。つまり、不動産を欲しいと思う人も今後は減少していく事が予想されます(事実、私のところにも相続した自宅が中々売れない、と言ったご相談もあります)。

都心部であればまだしも、少し地方に行ってしまえば不動産が余って困っている、と言う状況も今後ますます増加してくるでしょう。

③ 不動産は色々な評価がある

遺産分割を行う上で不動産をどのように評価するのか?と言う問題点もあります。不動産は現金や銀行預金とは異なり、評価の方法が4種類あり、相続の場面でもめる原因ともなるのです。

不動産を取得する相続人は、他の相続財産も取得したいと思う為、不動産の評価額を少なくしたいと思うでしょう。逆に不動産を取得しない相続人は、不動産の評価額を高くしたいと考えます。

このように、どの評価の方法を採用するかによって、各相続人が受け取る事が出来る相続財産が変わってきます。その為、この評価の方法を巡って相続トラブルに発展する事があるのです。

2.兄弟姉妹間の収入格差(経済格差)を巡ってもめる

最近、非常に問題となっているのが、この「兄弟姉妹間の経済格差(収入格差)」の問題です。

日本においていわゆる中間層が少なくなり、低所得者と富裕層の収入格差が広がっている事は様々なメディアで取り上げられており、兄弟姉妹間でも収入に格差があるご家庭が実際に存在します。

例えば兄弟姉妹の中にこのような方がいらっしゃる事も珍しくないと思います。

・40歳を過ぎても正社員になれず、不安定な派遣社員やアルバイトで生計を立てている。
・何十年も引きこもり生活をして、ニート状態になっている。
・何らかの事情で働く事が出来ず、生活保護で暮らしている。

このように兄弟姉妹間に収入格差がある場合、収入が少ない相続人は少しでも相続財産を欲しいと思い、他の相続人ともめる原因になるのです。

3.普通のご家庭が相続でもめない為の方法

① 相続の事を本音で話し合う

親と子供が一つの家で一緒に生活をしていれば、お互いの経済事情や考えている事を知りやすいでしょう。

しかし、現代社会では核家族化が進んでいる為、親と一緒に暮らしていない人の方が多いと思います。

親やその子供達がお互いに顔を合わして話す機会が少なくなる結果、子供達の仕事の具体的な内容や収入状況、その他の悩みについて家族間で知る機会が少なくなります。

そのような状況で相続が発生した場合、相続人間のコミュニケーションがかみ合わず、「もめる相続」に発展してしまうのです。

それを防ぐ為には、家族間で相続について本音で話し合う事が必要になります。時間をかけてでも、相続についてどのように考えているのかを話し合う事が、もめない相続へとつながる事になるのです。

② 遺言を作成する 

遺言を作成する事は相続トラブルを未然に防ぐ為に非常に有効です(出来れば公正証書遺言が良いでしょう)。

ただし、場合によっては遺言がある事によって相続トラブルに発展する事もあります。

その為、遺言を作成するのであれば上記①のように相続について本音で話し合った後の方が、より相続トラブルを未然に防ぐ事が出来る遺言を作成する事が出来るでしょう。

4.まとめ

相続でもめる原因の多くは、家族間のコミュニケーションがきちんとかみ合わない事によって発生します。

親が相続についてどのように考えているか知っていますか?

子供達が相続についてどのように考えているか知っていますか?

相続の事を本音で話し合う事こそ、不必要なもめ事を未然に防ぐ第一歩につながるのです。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
(詳細なプロフィールは名前をクリック)

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