法律は得体の知れないモノ?相続や遺産分割協議書でも大切な条文の考え方

大学の法学部出身の方や仕事等の関係から法律の勉強をされた方を除く一般の方は、法律は非常に分かりにくく、得体の知れないものと言う印象をお持ちなのではないでしょうか?

私自身も司法書士試験の為の勉強を行う前は法律の事を全く知りませんでした。その為、法律の条文を読んでもその意味が良く理解できず、毎日泣きながら勉強をしていました。

このように普通の人にとってみれば法律は本当に良く分からないものなのですが、相続は法律に従って手続きを行う必要がありますので、法律を避けて通る事は出来ません。

また、相続手続きの中で遺産分割協議書を作成する事がありますが、この遺産分割協議書に記載する内容も法律上の効果が発生した事を証明する為のものであり、法律の条文とその本質は良く似ています。
 
このように、相続では法律を絶対に避けて通る事は出来ません。その為、今回は法律等の条文のポイントを分かりやすくお話をして、皆様の中にある「法律は何だか良く分からない、得体の知れないもの」と言うイメージを払拭したいと思います。
 
  

1.そもそも法律等の「条文」とは?

法律や契約書、遺産分割協議書等は条文で構成されています。それではこの条文とは一体何なのでしょうか?

「条文」なんて堅苦しい言葉を使っていますので、「法律とは得体の知れない物」と言うイメージがある方は、この「条文」の言葉の意味でつまづいているのかも知れませんね。

まずは「条文」と言う言葉の意味を辞書等で調べてみました。

 

・法律文などで見られる、条項を箇条書きにした形式の文。単に「条」(じょう)とも言う(実用日本語表現辞典)。 
・法令・条約などを箇条書きにした文(大泉辞)。
・法律・条約などの,箇条書きの文(大辞林)。 

 

このように、ほとんどの辞書では条文の事を「箇条書きの文」と定義しています。

つまり、法律は条文で構成されているのですが、その条文とは箇条書きの文であり、単なる日本語です。

当たり前と言えば当たり前であり、こんな事をブログで書いてしまったら怒られるかもしれません。ただし、「法律は得体の知れない物」と言うイメージを払拭する為には、この「法律=条文=日本語」と言う事を再認識する必要があります。

日本語で書いているのであれば、その日本語をしっかりと読み理解する事で、「法律は得体の知れない物」と言う考えから一歩進む事が出来ます。

 

2.なぜ条文の解釈を巡って争いが発生するのか?

「法律=条文=日本語」である事はご理解頂けたと思うのですが、ではなぜこの「日本語」を巡って相続で争いが発生するのでしょうか?

日本語で書かれた文章は、日常的に日本語を使っている人であれば、その内容は理解出来るはずです。それでもなぜ相続の争いは発生するのか?

その一つの理由は、当ブログでも沢山お伝えしていますが、「相続人の感情」の問題です。被相続人と相続人の関係、又は相続人同士の関係性から、感情面の問題に発展する事があります。

そして相続の争いが発生するもう一つの理由が、「条文そのものの問題」つまり「条文の解釈の問題」があります。

分かりやすい例でご説明します。

 

(相続開始の原因)
民法第882条 相続は、死亡によって開始する。

 

相続がいつ開始されるのかを定めた条文です。日本語として非常に分かりやすい条文ですので、この条文そのものを巡って争われる事はないでしょう(被相続人がいつ亡くなったのかと言う「事実」の問題は発生するかもしれませんが)。

それでは、次の条文を見てみましょう。

 
 
(特別受益者の相続分)
民法第903条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
 
これは各相続人の相続分を調整させる特別受益について書かれた条文です。

その趣旨は、被相続人から遺言書による贈与を受けたり、婚姻や養親縁組のための贈与、生計の資本としての贈与を受けた相続人がいた場合、贈与を受けなかった他の相続人と比較して不公平になる為、相続分を調整するという制度です。

それではここで問題です。「婚姻や養親縁組のための贈与」「生計の資本としての贈与」って具体的にイメージ出来ますか?

多分、出来ないと思います。何故なら、この日本語そのものが非常に曖昧であり、人それぞれ解釈が異なるからです。

この「ある条文が日本語としての意味が難解、曖昧である」と言う事から →「読んでも良く分からない、どう解釈すれば良いか分からない」=「法律は得体の知れない物」と言う図式が生まれるのです。

もっと極端な事を言ってしまえば、条文には「AとBと言う事実があればCと言う法律上の効果が発生する」と書かれているのに、法律は得体の知れない物とイメージが強い方は、「AとBと言う事実があっても、実はDと言う別の法律上の効果が発生するのでしょう?」と言う、条文に全く書かれていない事が起きると思われているのです。

算数では「1+1=2」が当たり前なのに、法律の世界では「1+1=10」になる事があるのでは?と思っている方がいらっしゃると言う事です。これが「法律は得体の知れない物」と思ってしまう正体なのです。

実際にはそのような事はありません。あくまで言葉そのものの意味、解釈を巡って争いが起こるだけです。

つまり、条文の日本語の意味をしっかりと定義して理解すれば、法律は得体の知れない物では無くなるのです。

 
 

3.「得体の知れない物」から脱却する為の遺産分割協議書の作成の方法

相続は法律以外にも、条文について注意しなくてはいけない物があります。そう、「遺産分割協議書」です。

遺産分割協議書の作成については、インターネット等で様々なひな型が用意されている事もあり、ご自身で作成される事も多いと思います。

この遺産分割協議書と言うのは、被相続人の遺産について相続人同士で「このように分けました」と言うルールを証明する為の文書であり、その内容は条文で構成されているのですが、その条文の作り方によっては「得体の知れない物」=「新たなトラブルの原因となる物」となってしまうので注意が必要なのです。

それでは遺産分割協議書の条文についてどのように注意すれば良いのでしょうか?ここまでこの記事を読まれた方はもう分かったと思います。

そう、曖昧ではなく、誰が見てもその意味が一つしかない明確な言葉で、遺産分割協議書の条文を作成すれば良いのです。

遺産分割協議書の基本の形は、「どの遺産」を「誰が」相続するかを記載する事です。

「どの遺産」=遺産を特定出来る情報(不動産であれば登記事項証明書の情報、預金であれば銀行名、支店名、口座番号)「誰が」=相続人の氏名

を記載すれば、内容としては明確ですので、条文の内容で争われる事はないでしょう(勝手に実印を持ち出されて遺産分割協議書に押印されたんだ!」と言う争い方はありますが・・・)

また、いわゆる不動産を売却してその売却代金を相続人に分配する換価分割や、特定の相続人が遺産を取得して、その代償金を他の相続人に支払う代償分割も同様です。

どの不動産を売却するのか、相続登記は誰の名義にするのか?売却代金をどのように相続人に分配するのか?売却代金の分配はいつなのか?等、手間を省略しないで明確にすれば良いのです。

つまり、条文はあくまで日本語なので、「いつ」「誰が」「誰に」「どんな事をするのか」を複数の解釈が出来ないぐらいに明確にする事で、相続人全員が後々になっても困らない、スッキリとする遺産分割協議書が出来上がるのです。

逆に言ってしまえば、「私達別にもめないから」と言って上記の事を曖昧にしてしまえば後々相続人全員が困る事になるのです。だからこそ、面倒くさがらず、決めるべき事はしっかりと決めるべきなのです。もめる・もめないと言うのは関係ありません。

 

4.まとめ

このように、法律と言うのは突き詰めてみると「日本語で書かれたルール」であり、遺産分割協議書や契約書等も当事者を拘束する「日本語で書かれたルール」です。

確かに、相続や遺産分割協議書の作成は、今まで一度も法律に触れた事がない方にとってみれば未知の経験であり、「得体の知れない物」と考えるのは仕方がないでしょう。

しかし、「得体の知れない物」であっても、それを注意深く分かりやすく分解する事で、実はそこまで深刻に考える必要がないものである事が多々あるのです。

無意味な不安感が支配される事は精神的に一番良くありません。仕事のパフォーマンスも低下するでしょうし、生きた心地もしないでしょう。

そうであれば少しでも不安を解消する為に、自分なりに勉強したり、専門家にご相談する等、何からの行動をとった方が良いでしょう。

 

 

 

【このブログの著者】

甲斐 智也(かい ともや)
司法書士/上級心理カウンセラー
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