
こんにちは。司法書士の甲斐です。
皆様は「デジタル遺産(遺品)」と言う言葉を聞いた事がありますか?
相続が発生した場合、故人が残した遺産は原則して相続人に相続される事になります。
その中でも「デジタル的」な遺産がデジタル遺産と呼ばれているのですが、このデジタル遺産、遺産の中でも少しやっかいな部類に属するのをご存知ですか?
今回はそのデジタル遺品の相続対策のお話しです。
1.デジタル遺産(遺品)とは?なぜデジタル遺産の相続対策が必要なのか?
実は「デジタル遺産」の正確な定義はありません。
一般的には、故人が遺したパソコンやスマホ等の情報端末やインターネット上に残したデータの事を指します。
(※正確には、パソコンやスマホ等の本体は、民法上の「動産」と呼ばれる財産です。)
一昔前までは耳慣れない言葉でしたが、相続の場面でデジタル遺品の対応方法に困る方が増えてきて、デジタル遺産と言う言葉が注目されるようになりました。
デジタル遺産は残された遺族からは認識しにくく、相続手続きの中で大変苦労する事があります。
(例えば個人のパソコンのパスワードを遺族が知らなければ、パソコン内のデータを確認する事が困難になってきます。)
その為、デジタル遺産については、積極的な相続対策が必要になってくるのです。
2.デジタル遺産の基本的な考え方
デジタル遺産の基本的な考え方は、
② 相続人には絶対に見られたくないもの。
に分けて考えます。
① 相続人に引き継がせたい物(もしくは対応をして欲しいもの)
例えばネット銀行の口座やFX口座、仮想通貨等、何らかの収益を生み出しているインターネット上のサービスです(アフィリエイト、広告がついたYouTube、note等)。
これらが相続財産の対象になるか否かは、各サービスの規約を確認しないと分かりません。
規約上、相続の対象にならず、アカウントの抹消のみを行う事ができるサービスもあります。
ですが、相続財産になってもならなくてもそのまま放置すればいずれ問題になりますので、何らかの相続対策は必要になってきます。
② 相続人に絶対に見られたくないもの
遺族が見てしまうと、感情的にその後の生活に支障が出てしまうものです。
例えば、人に見られたくない趣味の写真や不倫相手等の写真と言った、社会通念上不適切と思われる物です。
これらの情報は、出来るだけ普段利用しているパソコン、スマホ等から遠ざける事が重要になってきます。
3.デジタル遺産の相続対策
① ネット口座系
インターネット上の銀行口座等は通常の預金口座と同様、相続の対象となります。
しかし、これらは遺族から見れば通帳等が無く分かりにくいものです。
その為、ログイン時のIDやパスワード、銀行・支店名、口座番号等の一覧を作成し、情報を整理する事が求められます。
② アフィリエイト、その他収益が発生しているサービス
アフィリエイトや広告がついているYouTube、有料で販売しているnote等も対策が必要になってきます。
まずはアカウントが相続の対象になるのかを各サービスの規約を確認し、その上でアカウントのID、パスワード等を一覧にしてまとめましょう。
③ SNS系の場合
Twitter、Facebook等のSNSは、ユーザーが死去しても何もしなければアカウントはそのままになります。
放置していても問題ないように思えますが、遺族が故人の生前の様子をうかがい知れるものですし、またコメント欄を荒らされる事もあります。
その為、このようなSNSについても相続対策を考えても良いでしょう。
基本的にSNSのアカウントは規約上、相続の対象とならないモノが多く、対応方法としてはアカウントの削除と言う事になります。
なお、Facebookには「追悼アカウント」と言う、ユーザーが亡くなった後も、その人の思い出を家族や友人がシェアすることができる状態に変更する事も可能になっています。
どのような形であれ、ご自身が利用しているSNSのIDとパスワードをまとめて、万が一の時にご家族が把握しやすいようにすると良いでしょう。
④ 家族に絶対に見られたくないもの
家族に絶対に見られたくないデータがある場合、最善の方法はデータを削除する事でしょう。
最近ではパソコンの所有者が亡くなった時に備え、自動でデータを削除してくれるソフトがあります。
指定した日数を経過した場合、またはパソコンの最終起動から何日間かパソコンが起動されなかった時に、自動でパソコン内のデータを削除すると言ったように様々なタイプがあります。
日付けを設定したり、ある程度のスパンでパソコンを起動する必要があるのですが、このようなソフトを使う事で、家族に見られたくないデータを削除する事が出来ます。
4.まとめ
デジタル遺産については、法整備がまだ不十分である為、利用者一人一人が独自に相続対策を行う必要があります。
ご自身はパソコンやスマホ、クラウドサービス等を使いこなせても、残される家族はそうとは言い切れません。
だからこそ、デジタル遺産も通常の相続対策と同じ様に考える必要があるでしょう。