遺産分割調停を絶対にやってはいけない場合

遺産分割協議・調停

こんにちは。司法書士の甲斐です。

相続でもめるケースと言うのはほとんどの場合は「遺産をどのように分けるか」です。

相続では何ら苦労をする事なく、多額の財産を手に入れる事が出来ます。また、被相続人や他の相続人との長年の関係性及び現在の家庭環境等から「遺産をもっと欲しい」と、程度の差はありますが人間であれば誰でも思ってしまいます。

財産の分け方(遺産分割協議)は、相続人全員が同意すればどのように分けても良いのですが、一人でも同意せず、話し合いがまとまらないのであれば、遺産分割調停や審判と言った裁判所を利用する手続きを行う必要があります。

逆を言えば、遺産分割調停等を行えば「遺産をどのように分けるか」と言った問題は解決しますので、人によっては「最後は調停をすれば良い」と思っている方がいらしゃいます。しかし、その考え方は申し訳ありませんが、残念な考え方と言わざるを得ません。

おそらく、このような方は遺産分割調停がどのようなものかをご理解されないまま、相続人との話し合いを真剣に行わなかったと思われます。そこで今回は、遺産分割調停の内容と、それに関連して遺産分割調停を避けた方が良いケースをお話ししたいと思います。

1.遺産分割調停の基本とデメリット

① 遺産分割調停とは?

各相続人は、遺産分割協議がまとまらない時、もしくは遺産分割協議が出来ない時に、その分割を家庭裁判所に対して請求する事が出来ます。

これが「遺産分割調停」と呼ばれるものです。

遺産分割調停は裁判所を利用する手続なのですが、いわゆる裁判とは異なり、裁判官が法律的に一刀両断して判断を行うのではなく、中立的な調停委員を中心としてあくまで当事者(相続人)が話し合いを行う事で遺産の分け方を決める手続きです。

このようにお話しすると、非常に使い勝手が良い手続きのようにも見えますが、その問題も実は存在します。

② 遺産分割調停のデメリット(問題点)

・時間がかかる
各家庭裁判所や相続の難易度によって異なりますが、概ね半年~1年ぐらいかかります。

家庭裁判所での話し合い(これを「期日」と言います)は、原則月1回、それが約1年間行われますので、遺産分割調停は非常に時間がかかる手続きと言えます。

・自分の希望どおりになるとは限らない。
遺産分割調停は相手がいる手続ですので、自分の希望どおりの結果に確実になるわけではありません。それどころか全く希望しない結果になる事もあります。

・進め方がある程度決まっている
東京家庭裁判所(他の家庭裁判所でもそうかもしれませんが)では、遺産分割調停はその進め方について「段階的進行モデル」を採用しています。

これは、遺産分割調停において問題となる事柄について、テーマ毎に順番に協議・決定していこうと言う方法です。具体的には下記の順番で進んでいきます。

(1)相続人の範囲
(2)遺産の範囲
(3)遺産の評価
(4)各相続人の取得額(特別受益・寄与分の有無とその評価)
(5)遺産の分割方法、の順に進められます。

この順番で進め、一つ一つ確定させていく事が事件を速やかに解決する事が出来る、とされています。その為、進め方の順番を変えたり、ある事についての決定を保留して先に進める等の柔軟な進行が出来にくくなっています。
 
・遺産分割調停では取り扱う事が出来ない問題がある。
いわゆる「前提問題」と呼ばれるもので、例えば、

・特定の財産が遺産なのかどうか(遺産の範囲の問題)
・特定の人が相続人であるかどうか(相続人の範囲の問題)
・遺言が有効か無効か、等です。

これらの問題は遺産分割調停では取り扱う事が出来ない為、別途民事訴訟等の手続きで解決する必要があります。

さらに、あくまで法律的な話しか取り扱う事が出来ない為、例えば寄与分には該当しないものの、被相続人を様々な理由から助けてきた等の事情は(他の相続人が同意すれば別ですが)、遺産分割調停では取り扱う事は出来ません。

2.遺産分割調停を避けた方が良いケース

① そもそも相続でもめたくない、角を立たせたくない

遺産分割調停は裁判ではなく話し合いなのですが、それでも裁判所を利用する手続ですので、調停を申し立てられた側の人間としては、あまり良い気はしません。

また、上述のとおり、遺産分割協議で話し合う事が出来る事には限界がありますので、全ての事情を考慮して話し合いをしたい場合は、遺産分割調停は不向きかも知れません。

② 相続人がそれぞれ遠方に住んでいる

遺産分割調停の申し立ては、相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所に行うものとされています。

その為、相続人全員が同じ市内に住んでいるのであればまだ良いのですが、例えば相続人がABの二人、Aが北海道、Bが鹿児島県に住んでいた場合、遺産分割調停は北海道か鹿児島か、若しくはABが合意で決めた家庭裁判所で遺産分割調停を行う必要があります。

遺産分割調停は月1回、約1年ぐらいかかりますので、その都度遠方の家庭裁判所に出向くのは、相続人の方にとってみれば非常に負担になります。

なお、平成25年に家事事件手続法が改正され、遺産分割調停で電話会議とテレビ会議のシステムが導入されました。

この電話会議やテレビ会議を利用する事で遠方にいる相続人も調停手続きい参加しやすくなるのですが、注意も必要です。

まず、電話会議は代理人弁護士がいる場合を除き、家庭裁判所がその利用を認めにくいと言う点があります。

電話は顔が見えませんので、どうしても本人確認を厳格に行う必要があります。

その為、代理人弁護士がついていなければ、電話会議の利用が認められにくい傾向にあります。

一方、テレビ会議を利用する場合は、テレビ会議システムのある最寄りの家庭裁判所に出向く必要がありますが、電話とは異なり顔が見えますので、その利用が認められやすいかもしれません。

(テレビ会議システムのある最寄りの裁判所がどこなのかを確認する必要がありますが。)

③ 遺産が極端に少ない

遺産分割調停は時間もお金もかかる手続きです。

その為、そもそも遺産が極端に少なければ遺産分割調停を行うメリットはほとんどありません。その為、この場合も避けた方が無難でしょう。

3.まとめ

遺産分割調停は確かに「遺産の分け方」を解決する事が出来る手続きですが、上記「遺産分割協議を避けた方が良いケース」で述べたとおり、事実上、遺産分割調停を利用出来ない事だってあります。

その為、まずはもめる相続を避ける為にもありふれた言葉ですが、感情的にならず建設的な話し合いを行う事が、相続では結局重要になってきます。相続人間でしっかりとコミュニケーションをとっていき、後の生活において精神的にモヤモヤしたモノを引きずらない話し合いを行いましょう。

当事務所では遺産分割協議のサポートを行っております。上級心理カウンセラーの資格を持つ司法書士が中立的な立場で相続人の皆様のお話をお伺いしお話をまとめる事で、もめない相続の実現を目指しております。

遺産分割協議の事、相続人間の話し合いの事でお困り、お悩みの場合はお気軽に当事務所にご相談下さい。

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この記事を書いた専門家

横浜市泉区の司法書士です。法律・老後資金・感情等多角的な視点から、自分らしい人生を送る為の認知症対策、相続対策をご提案します。元俳優/福岡県北九州市出身/梅ヶ枝餅、かしわめし弁当が大好き/趣味は講談/

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横浜相続困りごと相談室(司法書士甲斐智也事務所)
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