空き家に関する書面・通知書が市役所から届いた場合

相続一般

こんにちは。司法書士の甲斐です。

今回の記事は、所有している空家の事で、市役所から書面が届いた事についてご相談、ご依頼されたい方向けの記事です。

(なおご紹介する事例は、良くあるご相談を参考にした創作です。)

【事例】
Q:私は横浜市泉区のとある場所に父から相続した家を所有しています。

相続をしたのですが、私自身も自宅を持っていますので、父から相続した家は誰も使っておらず、現在空き家となっております。

父から相続した家は将来的に売却等を考えていたのですが、結局そのまま何も行わず、手入れ・管理もあまり行わないようになり数十年が経過しました。

そんなある日、横浜市から突然、私が所有している空き家について通知書が届きました。

内容は私が所有している空き家について「適切に管理するように」と言った内容です。

横浜市から突然送られたこの書面は一体何なのでしょうか?また、私は何か行う必要があるのでしょうか?

A:空き家所有者へ対して送られる市役所からの通知書は色々な種類があるのですが、どちらにしても早急な対応を行う必要があります。

1.空家等対策特別措置法

近年、人口減少や既存の住宅・建築物の老朽化、社会的ニーズの変化等に伴い、空き家が年々増加しています。

そして、空き家に関する様々な問題(屋根・外壁等の落下。火災発生のおそれ。衛生の悪化、等)が指摘されるようになりました。

この空き家に関する様々な問題に対応する為、平成27年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(通称:空家等対策特別措置法)」が施行されました。

この空家等対策特別措置法では空き家所有者に対して空き家の管理の努力義務を定め、市町村が適切に管理されていない空き家の所有者に対して「助言・指導・勧告」等が出来るようになりました。

事例の通知書は恐らくこの「助言・指導・勧告」に該当するものと思われますが、どちらにしてもこのような書面・通知書が市役所から届いた場合、空き家の所有者として早急に対応しないと様々なデメリットが発生します。

2.空き家所有者に対して市役所から送られる書面の内容

① 助言又は指導

特定空家の所有者に対して一番最初に行われます(空家等対策特別措置法第14条1項)。

文字通り、空き家の所有者が問題のある空き家に対して適切に管理が出来るように助言や指導を行います。

なお、この段階では書面による通知ではなく、口頭で助言・指導が行われるかも知れません。

※特定空家・・・適切に管理されていない空き家で、倒壊の危険や衛生上有害となるおそれとなったり等する、早急に何らかの対応を行う必要がある空き家の事です(空家等対策特別措置法第2条2項)。

② 勧告

市区町村は、特定空家の所有者に対して上記の助言又は指導を行った場合で、特定空家の所有者がまだ適切に管理を行わない場合は、適切な管理を行うように勧告をする事が出来ます。(空家等対策特別措置法第14条2項)

勧告はあくまで特定空家の所有者に適切な管理を自発的に促すのですが、上記の助言・指導よりもう一段階進んだ内容になっています。

この勧告に従わなかった場合、次の「命令」にステップアップします。

③ 命令

市区町村は、特定空家の所有者に対して上記の勧告を行った場合で、特定空家の所有者が正当な理由がないにも関わらず勧告された内容を行わず、特に必要があると認めるときは、その勧告に係る措置をとることを命ずることが出来ます。(空家等対策特別措置法第14条3項)

この命令は法的拘束力があり、特定空家の所有者がその命令に違反した場合は50万円以下の科料に処せられます(空家等対策特別措置法第16条1項)。

④ 行政代執行

市区町村が、特定空家の所有者に対して命令まで行ったにも関わらず、その措置を行わなかった場合、市区町村がそれを代わりに行う「行政代執行」の手続きを行う事になります。

例えば、空き家が倒壊寸前のボロボロの状態で、そのままでは近隣に危険が生じる場合、空き家の所有者に命令まで行ったにも関わらずその処置が行われない場合は、市区町村は空き家の所有者に代わってその空き家を取り壊す事が出来ます。

なお、その費用は当然に所有者の負担となります。

3.市役所の通知書について、早急に対応しないデメリット

① 空き家の敷地の固定資産税が上がる

固定資産税には「住宅用地の特例」と言う住宅が建っている土地の固定資産税が安くなる制度があるのですが、空き家が特定空家と認定された場合、この特例が適用されなくなります。

つまり、特定空家に認定された次年度以降、固定資産税が跳ね上がる事になります(約6倍)。

空家等対策特別措置法第14条に基づく助言又は指導・勧告・命令が行われたと言う事は、特定空家に認定されたと言う事です。

つまり、次年度以降の増額される固定資産税の納付の為の資金を確保するか、早急に売却するかの対応を取る必要があります。

② 科料、行政代執行の費用が発生する

上述のとおり、「命令」まで行った場合にそれを無視すると科料に処せられまし、行政代執行が行われたらその費用は空き家の所有者が負担する事になります。

つまり、空き家の問題を放置していてば、状況が悪い方向に進むだけです。

4.具体的な対応方法

① 登記上の所有者の名義確認

市役所から空き家に関連する書面・通知書が届いた場合、まずは登記上の空き家の名義がどうなっているのかを確認して下さい。

事例のように、空き家になるケースの一番の原因は相続した事によるものですが、その相続登記がきちんとなされていない事が非常に多くなっております。

相続登記がきちんと行われていなければ、その後に売却等の処分が出来ませんので、まずは空き家について登記上の名義がどうなっているのかを確認しましょう。

② 処分の方法を考える

空き家にしているぐらいですから、おそらくご自分で空き家を使用する事は想定されていらっしゃらないと思いますので、空き家の処分方法(賃貸や売却等)を考える必要があります。

一般的には空き家を取り壊し、更地にした上で売却、と言う流れが多いと思います。

5.まとめ

特定空家の認定に関しては、様々な認定基準があり、その判断には慎重な議論がなされています。

逆に言ってしまえば市区町村から特定空家に認定されて、助言・指導、勧告、命令に関する書面・通知書が届いたと言う事は、緊急性が非常に高いと思って下さい。

(助言・指導の段階での対応が一番望ましいでしょう。)

当事務所では、空き家に関連する相続登記や、その後の処分に関するご相談等を積極的に承っております。

空き家についてお悩み、お困りの場合はお気軽にお問い合わせ下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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