相続の話し合いに代理人として弁護士がついた場合の対処方法

弁護士相続トラブル事例

【事例】

Q:相続人である長男に弁護士が代理人について困っています。

数ヶ月前に父親が亡くなり、相続人(長男、次男、長女である私の3人)で遺産分割協議を行っていました。

ところが、長男と私達の意見の食い違いから話し合いが難航し、そんな時に突然長男の代理人を名乗る弁護士から書面が届きました。

その内容は、弁護士が長男の代理人になったので今後は弁護士を通し、長男とは直接話をしないようにと記載していました。

その後、長男からは何の連絡もありません。

私としては家族間の事を直接分かっているのは長男だけですし、出来る事であれば長男と直接話をしたいと思っていますが、それはダメなのでしょうか?

また、仮に弁護士と話をしなければいけない場合、こちらも弁護士に依頼をした方が良いのでしょうか?

費用ももったいないですし、自分で弁護士との交渉が出来るのであれば、そのようにしたいと思っています。

A:ご自分で弁護士ときちんと交渉が出来るかどうかは、あなたの素質にもよりますが、正直な所、相手の弁護士次第です。

相手の弁護士の交渉のやり方、スタンスによってはあなたも弁護士にお願いした方が良い場合があります。

なお、弁護士を通さず直接長男と話すとルール違反になります。注意しましょう。

1.代理人弁護士がついた場合に、直接相手と話す事が出来るのか?

相続の話し合いに特定の相続人の代理人として弁護士が選任された場合、代理人である弁護士と遺産分割協議をさぜるを得ません。

直接長男本人に連絡して話し合いをしようとしても、代理人弁護士に話をするようにとの応対をされることになります。

なお、これには、法的な強制力を定めた法律そのものはありません。

しかし、判例(東京地裁平成17年9月13日)では、弁護士が代理人でいるにも関わらず、本人に直接連絡を取った人物に対して不法行為責任を認めています。

その為、弁護士が代理人になっている場合は、必ず弁護士を通して話しをするようにしましょう。

2.相手方相続人に弁護士がついた場合の対応

それでは、相手相続人に弁護士がついている場合、あなたも弁護士に依頼した方が良いかと言うお話ですが、それは相手の弁護士次第です。

基本的に相手方相続人の弁護士は、当然に相手方相続人に有利な遺産分割の分割案を出してきます。

その分割案に無条件で丸め込まれないようにする事が大前提ですが、大きな判断ポイントは、相手方相続人の弁護士が、どのようなスタンス、戦略であなたに接するかです。

それ次第で、あなたも弁護士に依頼した方が良いかが変わってきます。

① 相続で良く意見が食い違うポイント

まずは相続でもめた場合、各相続人で意見が食い違うポイントでかつ相続において重要な事を確認しておきましょう。

それはずばり、寄与分と特別受益、そして遺産の評価方法です。

相続分を増減させる寄与分や特別受益は、主張が認められる事により、自分に有利に話が進みますので、相続で良くもめる部分です。

そして、遺産の評価、特に不動産や株式等の有価証券の評価方法は様々で、それらの遺産を取得したい人は当然評価を低くしたいですし、それらの遺産を取得しない人は、逆に評価を高くしたいと考えています。

上述したとおり、寄与分、特別受益、遺産の評価方法は相続において重要な要素です。

その為、相手方相続人の弁護士はこの3つについて徹底的に主張し戦ってくるでしょう。

問題はその主張の方法、戦略です。それによってあなたも弁護士を依頼した方が良いかが変わってきます。

② 条文や判例で認められている主張を行ってくる場合

弁護士は法律の専門家であり、当然にその武器は法律です。

その為、弁護士が依頼人の為に相続に関する主張を行う場合、必ず法律や判例を根拠としているはずです。

例えば民法で定められている法定相続分です。民法の条文では法定相続分が決まっており、それをごまかす事は出来ないでしょう。

また、法定相続分を増減させる寄与分や特別受益に関しても、判例が積みあがっています。

相手方相続人の弁護士は、自分の依頼者の利益を最優先します。しかしそれはあくまで法律の範囲内の話であり、法律の条文や判例に照らし合わせて主張してくるはずです。

つまり、その主張には根拠となる法律の条文や判例があるはずで、常識ある弁護士であれば、それを必ずあなたに明示しているはずです。

その為、あなたがその主張に丸め込まれる事なく、きちんとその根拠を精査する事が出来るのであれば、弁護士に依頼しなくても良い事になります。

(逆を言えば、あなたがその根拠を精査する事が出来ないのであれば、あなたも弁護士に依頼した方が良いでしょう。

② 条文や判例を無視した、屁理屈な主張を行う場合

問題はこちらのパターンの弁護士です。

何度も申し上げているとおり、弁護士は自分の依頼人の利益を最優先すべき事が求めらます。

つまり、極端な事を言ってしまえば相手方の事はどうでも良いのです。

その為、相手の無知に付け込んで、法律の条文や判例を自分の都合の良いように捻じ曲げて解釈し、屁理屈を押し通そうとする弁護士がいます。

また、法律上の主張だけではなく、本来関係がないあなたの人格について攻撃してくる弁護士もいます。

このタイプの弁護士との話し合いはそもそも会話が成立せず、建設的な議論が出来ません。

また、日常生活の中でこの弁護士の事を考えなくてはいけない時間が非常に多くなり、非常にストレスがたまります。

言葉は悪いですが、そんなくだらない弁護士の為に、あなたの大切な時間を奪われてはいけません。

あなたも弁護士を代理人にたてた方が良いでしょう。

③ 番外編:コミュニケーション能力が著しく低い弁護士

ごく稀に、コミュニケーション能力が著しく低い弁護士が存在します。

分かりやすく言えば、質問に対して見当違いな答えを返してくる人です。

このタイプの弁護士も対応するのが非常に困難だと思いますので、あなたも弁護士に依頼した方が良いでしょう。

3.まとめ

相手方相続人が弁護士を代理人とした場合、本来であればあなたも弁護士に依頼する事が望ましいでしょう。

しかし、様々な事情で自分で弁護士と交渉したい(交渉せざるを得ない)時もあると思います。

その時に重要なのは、上記でも出てきました「相手の主張の根拠」を必ず確認する事です。

相手方相続人の弁護士の主張の中で、納得が出来ない話が出てきたら、必ず「その根拠は何ですか?」と質問するようにして下さい。

文責:この記事を書いた専門家
司法書士 甲斐智也

◆司法書士で元俳優。某球団マスコットの中の経験あり。
◆2級FP技能士・心理カウンセラーの資格もあり「もめない相続」を目指す。
◆「相続対策は法律以外にも、老後資金や感情も考慮する必要がある!」がポリシー。
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